宮司愛海アナも驚いた内村航平選手の決断。代表内定後の「言葉」に感じた凄み

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

【0.001点が明暗を分けた代表争い】

 2021年4月。ついに始まった代表選考。種目別枠の代表権を得るためには、4月の全日本選手権と5月のNHK杯、そして6月の全日本種目別の3大会で、予選と決勝合わせて5回演技をし、各演技で得られるポイントの合計でトップに立たなければなりません。

 内村選手が目指すのは、団体4人の枠ではなく、国内選考においてたった一つ与えられている種目別での代表枠。大きなミスが一度でも出たら代表選考から脱落する過酷な戦いです。

 代表選考スタートとなる4月の全日本選手権では、決勝で15.466の高得点をマーク。「出来は60点」という自己評価も、予選と合わせて80ポイントを獲得します。

 ミスの許されない戦いが続く中、翌月のNHK杯でも15.333という高い得点で40ポイントを獲得。2大会を終えた時点で、内村選手の持ち点は合計110ポイント(NHK杯終了時に全日本選手権予選のポイントが30に変更)となりました。

 迎えた最後の選考大会・全日本種目別選手権。種目別の代表枠を争うライバル、跳馬の米倉英信選手と一騎打ちとなります。

 米倉選手は、大学時代に自身の名がつく大技「ヨネクラ」を国際大会で成功させたのち、代表選考へ向け着々と実力を伸ばしてきました。本番での勝負強さが武器の米倉選手がここまでの2大会で獲得していたポイントは内村選手と同じ110ポイント。勢いそのままにこの種目別選手権予選でも高得点を出し、合わせて140ポイントを獲得していたのでした。

 決勝。まずは米倉選手の跳馬。2本をしっかりまとめて15.100。30ポイントを加算し、米倉選手は合計170ポイントで代表選考のすべての演技を終えます。

 そして内村選手の鉄棒。その直前、すでに団体メンバーで代表入りを決めている橋本大輝選手が15.133という高得点を出したことで会場は大きな盛り上がりを見せます。極限のプレッシャーがかかる中、内村選手の演技に予期せぬほころびが出ます。演技中盤、車輪が戻る痛恨のミス。これ以上ミスが出たらオリンピックの道が霞みゆく中、最後の着地は・・・「ドスッ!」。静寂を切り裂き、マットに両足を突き刺すように決めます。

 得点は、15.100。20ポイントにとどまり、全選考を終えての合計は170ポイント。なんと米倉選手と並ぶ展開に。 

 結果、タイブレークという選考基準で内村選手が種目別の代表権を獲得。わずか0.001点が勝敗を左右する代表選考の厳しさを目の当たりにした瞬間でした。

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