宮司愛海アナも驚いた内村航平選手の決断。代表内定後の「言葉」に感じた凄み

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

 6月。内村選手のある決断が、日本中を驚かせます。

 目標としていた個人総合(ゆか、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒の6種目で争う)ではなく、「種目別・鉄棒に専念」してオリンピックを目指すと発表したのです。「6種目やってこそ体操」とオールラウンダーへの強いこだわりを持ち続けてきた内村選手にとっては、自身の体操人生を覆すような、大きな決断でした。

「(6種目)やろうと思っても、痛くなってできなくて。『やっぱり、もうやっちゃダメなんだな』と」

 身体の痛みと向き合い現実を受け入れる中で見えてきた、鉄棒に専念するという選択。年明けに再び訪れたオーストラリアで鉄棒に絞り、練習を重ねる中で得た手ごたえは徐々に確信へと変わっていきました。

 オールラウンダーのプライドよりも、オリンピック出場。再び、世界の頂点を目指したいという強い気持ちが後押しした決断だったのです。

 そんな、鉄棒のスペシャリストとしてのデビュー戦となった、9月の全日本シニア選手権。1年ぶりの試合で、自身最高難度となるH難度「ブレットシュナイダー」に挑戦します。これまでもずっと練習を重ねてきたものの、試合で成功させられずにいたこの大技。鉄棒のスペシャリストとしてこれから戦っていくためには、必ず習得しなければならない技です。

 しかし肝心の試合では、なんとか鉄棒を掴むも、理想とするできからは程遠く、結果6位。演技後、練習の成果を出せず残念としながらも「試合さえこなしていけば、いい演技は出てくる。金メダルを取るための道筋を自分は知っている」と話すなど、スペシャリストとしての第一歩には、希望を見出していたようでした。

 その言葉通り、そこからの内村選手は、演技をするたびに凄みを増していき、11月、コロナ禍で各競技の先陣を切って行なわれた体操の国際大会では、直近3年の世界選手権金メダルスコアを上回る、15.200という高得点をマーク。そして12月の全日本選手権では完璧な演技で15.700とさらに得点を伸ばします。9月の全日本シニアで「なんとか掴んだ」ブレットシュナイダーは安定感を増し、試合ごとに精度が上がっていきました。

2021年3月 新所属先発表会見後に取材 写真:フジテレビ提供2021年3月 新所属先発表会見後に取材 写真:フジテレビ提供

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