宮司愛海アナが見てきた内村航平選手の苦悩。心の変化を感じた「言葉」 (3ページ目)

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

 ミスに対しても悔しい気持ちが全く持てず、試合中に、はやく終わってほしいと思うほど辛かった全日本。そして実際に、2005年以来久々に経験した予選落ち。どん底まで沈んだキングがやっと前を向けたのは「とある1週間」があったおかげでした。

 それが、練習を共にする佐藤寛朗コーチに「オーストラリアに行ってみませんか? 行ったら変わるので」と声を掛けられ、「押しに負けて」行ったオーストラリアでの時間。

「特別な何かをしたわけではないけれど、いつもと違う環境で、いつもと違う空気を吸ってみたことで、帰国してから『よしやろう』という気持ちになれました」

 そこからは、なぜあんな状態まで落ちていったのかーー。その原因を割り出していく日々を送ります。そもそもなぜ痛みが出たのか、なぜ練習ができなかったのか......。

 考えた結果、内村選手がたどり着いた結論は、2017年のNHK杯後から続けてきた「つり輪の強化」でした。世界と戦うため、2年間重点的に取り組んできたF難度の「後転中水平」という技。

 伸身姿勢で身体をゆっくりと振り上げ、床に対して平行に身体を維持するという技で、静止技の中ではもっとも難しいとされています。この技でしか使わない筋肉に疲労や負担が積み重り痛みが出たことで、他の種目で、あるべき体の使い方ができなくなり、技術的なずれが出た、と気づいたのだそうです。

当時まだ建設中だった有明体操競技場前で撮影 写真:フジテレビ提供当時まだ建設中だった有明体操競技場前で撮影 写真:フジテレビ提供

 原因が解明できたおかげで前を向くことができた内村選手。2か月前、「夢物語」と語った東京オリンピックについて、紡ぎ出した言葉とは。

「夢物語から、物語が消えたくらいです。『夢』になりました」

「実現不可能から実現可能に変わった、っていう感じですかね」

「夢は叶えるためにある。これまでも叶えてきたので」

 19歳でオリンピック初出場。リオでは個人総合に加え、悲願の団体金メダル。思い描いた夢をすべて叶えてきた内村選手が、東京で「最大の夢」を叶えるべく、再び動き出したことを感じた瞬間でした。

後編へ続く

PROFILE
宮司愛海(みやじ・まなみ)

91年7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。
福岡県出身。血液型:0型。
スポーツニュース番組『S-PARK』のメーンキャスター。
スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、
多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。

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毎週土曜日 24時35分~25時15分
  日曜日 23時15分~24時30分

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