宮司愛海アナが見てきた内村航平選手の苦悩。心の変化を感じた「言葉」

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi


宮司愛海連載:『Manami Memo』第24回

フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった『Manami Memo』。第24回と続く第25回は、宮司愛海アナが取材を重ねてきた体操界の「レジェンド」について。


 北京から3大会連続でオリンピックに出場し、個人総合連覇(ロンドン、リオ)や団体のメダル獲得(北京・ロンドン銀、リオ金)を成し遂げてきた体操界の「キング」こと内村航平選手。

 度重なる怪我や、個人総合から鉄棒一種目へ専念した決断の背景、4度目のオリンピックとなる東京への切符を掴むまでのまさに波乱の道のりを、これまで12回行なったインタビューの中で伺った「内村航平選手の言葉」から振り返っていきます。

 前編となる今回は、2020年までのお話。

【連勝ストップ。そして再確認した「勝つことの喜び」】

 初めて内村選手にインタビューをさせていただいたのは、2018年5月のNHK杯後でした。前年の世界選手権で左足を負傷し途中棄権、2009年から続く個人総合での連勝記録を6でストップさせていた内村選手は、このNHK杯の1か月前に行なわれた全日本選手権で、新星・谷川翔選手と白井健三選手に敗れ3位に。全日本で優勝を逃すのは、実に2007年大会以来(当時大学1年生)のことでした。

 東京オリンピックに向けても、絶対に出場しておきたい世界選手権。その切符を掴むにはこのNHK杯での巻き返しが必須という状況で、内村選手はまたしてもピンチを迎えます。

 最終種目の鉄棒を残し、1位谷川翔選手との差は0.564。体操では決して小さな点差ではありません。絶対に成功させなければならない重圧の中、内村選手は、これがキングだ!と言わんばかりの完璧な着地を決めて15点近い高得点をたたき出し、見事逆転優勝を果たしたのでした。

2018年5月 NHK杯後初めてのインタビュー 写真:フジテレビ提供2018年5月 NHK杯後初めてのインタビュー 写真:フジテレビ提供

「勝つことってやっぱり嬉しいなって思いました。」

「(金メダルを)もらって当たり前だと思っていた自分がすごく失礼ですよね。」

 そう語りながら見せる試合後の笑顔はどこかすがすがしく、体操少年に戻ったかのような無邪気さを感じました。

 リオオリンピックで金メダルを獲得してから、調子の上がらない1年を過ごした2017年。怪我とリハビリで体操がすこし嫌になりかけたという期間を経て見えてきたのは、「勝つことの喜び」。世界の頂点に君臨し続けたキングが、原点へと立ち返った瞬間でした。

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