稀代のマルチランナー田中希実選手。挑戦の先にある「誰も見たことがない世界」 (2ページ目)

田中希実選手(右)に取材した宮司アナ田中希実選手(右)に取材した宮司アナ
「世界レベル」を見据えた練習、父の存在

 そんな田中選手を支えるのは、コーチの田中健智(かつとし)さん。田中選手のお父様です。健智さんは元・陸上選手で、大学の部活に所属せず企業のサポートを受けながら競技に取り組む田中選手を指導されています。

 現役時代から健智さん自身で練習メニューやトレーニング内容を考えていたこと、そして同じく北海道マラソンで2度優勝している田中選手のお母さま(健智さんにとっては奥様)の練習内容を考えていたことなども手伝って、コーチになったという背景があったそうです。

 しかし、その練習メニューはかなりハード。この日の練習でも終始厳しい言葉が飛び、一秒たりとも気の抜くことができない雰囲気でした。

 インターバル、レスト中でも動き続け、極力休まないスタイルをとることで1回の練習を点ではなく「線」でとらえるといった発想は、田中選手をして「常識外れ」と言わせる独自のもの。

 それほど過酷な練習を課す裏側にあるのは「人と異なる道を行くのであれば、そこで必ず結果を出す『覚悟』が必要」という想いなのだそうです。

 自分のパターンにはめ込んだ練習ではなく、どの距離、どの状況からでも勝てる選手を目指した練習は、まさに世界を意識したハイレベルなものでした。

「できないことがあるからこそ成長できる」

 昨年ドーハで行なわれた世界選手権では、初出場ながら世界の舞台で自己ベストを大幅に更新。5000mの決勝では15分00秒01という日本歴代2位の記録(当時)で14位に入り、シニアデビューをいい形で終えた田中選手。「完敗だった」と言いつつも、悔しさより満足が勝り、素直にこれから頑張ろうと思えた大会だったそうです。

 世界の舞台で結果を残せたことでついた「日本の中でもトップで走れる選手」だという自信が、今年の大躍進につながっているのでしょう。

 そんな田中選手が目指すのは、やはり世界で戦える選手になること。

 オリンピックは、「そういった選手を目指す中で経験として必須のものであり、目標というものではない」と話すその目はまっすぐで、速くなることへの純粋な情熱を感じました。

 ちなみに、これは余談ですが、実は読書家だという田中選手。きっかけは、部活の日誌に読んだ本を書く欄があったことで、高校3年間で100冊の本を読んだそうです。『赤毛のアン』といった児童文学から、陸上や食べ物に関する本を好んで読むことが多く、もっとも好きな本は箱根駅伝に関する書籍だと話していました。

 インタビューの端々からも、思考の深さとそれを言葉にする能力の高さを感じました。

 そして、最後にこのインタビューの中で最も印象的だった田中選手の言葉をひとつ。

「とにかく速くなりたいという思いがずっと強くて、その思いに終わりはない。種目も特に絞らず、とにかく走ることが速くなりたい一心でずっとやっているので。中学生のときに陸上に取り組み始めた時のまんまの気持ちで今もいるのかなと思います」

PROFILE
宮司愛海(みやじ・まなみ)
91年7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。
福岡県出身。血液型:0型。
スポーツニュース番組『S-PARK』のメインキャスター。
スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、
多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。

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毎週土曜日 24時35分~25時15分
  日曜日 23時15分~24時30分

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