宮司愛海アナが感じる、新型コロナウイルス感染症が変えたスポーツ取材の在り方 (2ページ目)

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

 たとえば、『S-PARK』では番組内のコーナー「S-PARK ONLINE」などで積極的にリモートでの取材を行なってきました。この「S-PARK ONLINE」は、アスリートの方のご自宅と中継を結んで、競技のことはもちろん、普段見られない素顔などに迫っていくコーナーです。

 コーナー内の企画で「自宅にある宝物」を毎回見せていただいているのですが、そういったところから皆さんの意外な一面に触れることができたり、自宅からだからこそリラックスした表情が見られたりすることで、なんだか見ている側まで元気になれる気がしました。

 ほかにも、これまでなかなか取材できなかった海外などにいるアスリートの方々、たとえばドイツにいるサッカーの長谷部誠選手や、北海道で練習をしているスピードスケートの高木菜那選手・美帆選手姉妹といった方々にお話を伺えたのは、ある意味この状況だからこそできたことかもしれません。

 こうして取材をする中で、避けて通れないテーマといえば、やはり「五輪延期」。センシティブな話題だからこそ、これまで以上に様々なことに配慮をし、気持ちに寄り添えるように、と思いながらお話を伺っていました。

 柔道の大野将平選手の言葉で心に残ったのは、「自分でコントロールできないことを考え続けても状況が変わるわけではないから、今できることをできる限りやるだけ」という言葉。大野選手らしいなと思う一方、私自身ももやもやとしていた気分がすっと晴れ、すとんと腑に落ちる感覚になったのでした。

 ほかにも、31歳でベテランの域に達している卓球の水谷隼選手が、延期のデメリットよりもメリットの方がはるかに大きいとおっしゃっていたのには驚きと感動がありました。

 過酷な代表争いに注力してきた去年。1年延期になったことにより今年は自分と向き合う時間ができ、新たな挑戦や成長のできる時間が増えたというのです。ベテランの水谷選手の言葉だからこそ重く響き、何事も前向きな力に変換していくことの大切さというのを学べた気がします。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る