宮司愛海×中村光宏のフィギュア話。
四大陸で感じた日本女子選手の成長

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

宮司 一気に2022年の北京冬季五輪に向けて、照準を合わせてきた感じを受けました。

中村 それもあるし、アレクサンドラ・トゥルソワ、アンナ・シェルバコワ、アリョ-ナ・コストルナヤという『ロシア3強』への意識もあるよね。ただ、坂本選手、樋口選手、紀平選手にとっての四大陸選手権の意味合いには、それぞれ違いがあったと思っているんだ。

宮司 坂本選手にとっての意味合いというのは?

中村 彼女にとって今シーズン最後の国際大会で、新たな挑戦をした。これは来季を考えれば大きな経験になると思う。プログラムに4回転トウループの大技が入るだけで、選手が感じるプレッシャーや緊張感は増えるし、体力的な部分や神経の使い方でも大きな変化はあるはず。そこを大会で感じ取れたのが収穫だと思う。ただ、坂本選手は4回転トウループに挑むより先に、トリプルアクセルをやるんだと勝手に思っていたから、このチャレンジは驚いたなあ。

宮司 坂本選手のダブルアクセルのジャンプの高さを考えれば、1回転増やす方が現実的なのかなと思いますもんね。

中村 そうでしょ。僕は紀平選手の次にトリプルアクセルをプログラムに入れるのは坂本選手だと思っていたのだけど、ジャンプとはそういうものではないらしい。前向きにジャンプして、後ろ向き着氷するアクセルは決めるのが難しくて、それよりは後ろ向きで飛び出して後ろ向きで着氷するジャンプの方が坂本選手は身体を締めやすいそうなんだ。しかも、4回転トウループを本格的にプログラムに入れようと考えたのが、今年になってからなんだって。

宮司 そうなんですよね。坂本選手が「八戸国体2020の数日前に初めて飛んでみた」と話していましたし、坂本選手を担当している中野園子コーチは「北京(五輪)までに4回転とトリプルアクセルを入れる」とコメントされていて。

中村 坂本選手への楽しみはもちろんだけど、彼女の挑戦がほかの選手にどんな影響をもたらすのかも楽しみだよね。

宮司 坂本選手にとっても、今シーズンは調子が上がらずに苦しみましたけど、来シーズンに向けての明るい材料を手にできたように感じています。

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