宮司愛海&西岡孝洋が語る全日本
フィギュア「時代の転換期になる?」

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

西岡 そのとおりだと思うよ。鍵山選手と佐藤選手のライバル・ストーリーは、ここから5、6年は続いていくかな。

宮司 ふたりともまだ高校1年ですからね。

西岡 北京五輪の次のオリンピックは、2026年。ふたりともその頃にピークを迎えていると思うし、彼らは日本男子スケートの未来を照らす新しい力だと思う。

宮司 そのふたりが、これまでの日本男子の礎を築いてきた髙橋選手や羽生選手と同じリンクで滑る。すごいストーリーですね。西岡さんは、若い選手を伝える時に注意していることはあるんですか? あまり大きな期待をかけすぎるとプレッシャーになる可能性もあるかなと考え始めると、どんな言葉を使えばいいのか悩んでしまうこともあって。

西岡 あまり追い込んだ言葉は使わないようにしている。例えば「勝負の全日本」という言葉は代表争いの選手には使うけど、これから羽ばたく選手たちには使わない。「期待の」とか「これからを担う」とかの明るくポジティブな単語を選び、そこに自分が思っていることをプラスして言うようにしている。

 2014年のソチ五輪代表選考会の全日本フィギュアスケート選手権の時に、トップ選手に混じって当時16歳でジュニアだった宇野選手がひとり入っていて。僕は、彼が4年後には主役になると思っていたので、「4年後に同じようなプレッシャーを経験することになるから、彼にとっても大きな大会です」という紹介をしたんだ。4年後の平昌五輪の時には、「よかった、間違えなくて」と安堵した(笑)。

宮司 そのシーズン、その大会のことだけではなくて、4年後や8年後にどんな選手になっているのだろうと想像しながら取材したり、実況したりというのも大事なんですね。

西岡 選手一人ひとりの気持ちになって考えるのも醍醐味だろうね。宮司は女子選手を取材しているけど、今年はどういうところに注目しているの?

宮司 紀平梨花選手が気になっています。グランプリシリーズやグランプリファイナルで、ロシア勢が次々に4回転を跳ぶようになっている。男子もそうですが、誰かが難しいジャンプを跳び始めると、それに引っ張られて次々に跳ぶようになる。紀平選手も、次いつ本番の舞台でチャレンジするのかに注目しています。

西岡 紀平選手はトリプルアクセルを跳べて、樋口新葉選手もこの前すごく綺麗に跳んだトリプルアクセルをインスタに載せていたけど、他の選手もトリプルアクセルは跳ばなきゃいけない時代になってきたよね。そのなかで迎える今回の全日本フィギュアスケート選手権は、戦略的にすごく面白い大会になる予感がしている。

 紀平選手の場合は4回転サルコウとトリプルアクセルで勝ち切る作戦になると思うけど、他の選手たちは何で勝負をしてくるのか。

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