2019.12.17

宮司愛海×西岡孝洋のフィギュア対談。
中継の醍醐味とその難しさ

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

宮司 一番大変だったのは何ですか?

西岡 基本的なスタイルは他と変わらないけれど、こういうところで盛り上げて、こういう感じのコメントを入れようっていうのは試行錯誤したこと。盛り上げようと言葉を発すると「うるさい」と言われたこともあるし、ベストなタイミングで発しても言葉数が多すぎると駄目だなと感じさせられることもあった。

 失敗を繰り返しながら、最適と思われる言葉数を探していくのは大変でしたね。だから、いまの若手アナウンサーが1回目からベストな答えを持ってくると、「すごいな」と感心しながらも、そのフォーマットがあるのは、僕が踏み慣らして、耕したからだぞって思ったりもする(笑)。

宮司 そうなんですね(笑)。私は、フィギュアスケートファンの方々は競技にとても詳しい方が多いので、どういう言葉を選ぶかの判断が難しいなと思っていて。感じたことをそのまま伝えるのが正しいことなのか。この表現が最適なのか。答えがわからなくなってしまう苦しみがあります。

西岡 そこは難しいし、考えさせられるよ。ファンにはそれぞれ好きな選手がいて、すべての方を不快に感じさせないコメントをするよう意識を持っておくことが大事。これはフィギュアスケートに限らず、すべての競技に通じることだと思う。

宮司 本当に難しいです。

西岡 僕もいろんなことにチャレンジしながら、16年かけてここに辿り着いた。だけど、まだまだ実況アナウンサーとしてのベストな形は他にあるかもと思っていて。まずはベーシックなスタイルを身につける。そこから足したり引いたりをしながら独自性を築いていくしかないんじゃないかな。

宮司 去年初めて、全日本フィギュアスケート選手権で、競技直後の選手にインタビューする仕事をしたのですが、質問を3つ、4つすることが、こんなにも難しいのかと改めて気づかされました。いい演技ができた選手ばかりではなく、涙でボロボロの選手にもインタビューしなければいけない。『悔しい』と思っている選手になんて言葉をかけるのか、すごく悩みました。