宮司愛海アナが日本柔道の厳しさを実感。銀メダルでも祝福できない? (3ページ目)

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

 女子で最も印象に残ったのは、63キロ級の田代未来選手の決勝です。相手は、女子選手の中では"全階級通じて最も強い"とも言われる、フランスのクラリス・アグベニュー選手。

 これまでの対戦成績は、田代選手の1勝8敗。昨年の世界柔道でも決勝で敗れ、この一年間「今年こそは倒す」という思いを持って臨んだ決勝でしたが、延長合わせて11分。最後の最後まで諦めず相手を追いつめたものの、最後に技ありを取られて本当に悔しい敗戦となりました。

 そして、試合後の、「追い抜けそうでも追い抜かないと意味がない」という田代選手の言葉。悔しさが伝わるその涙には、私ももらい泣きしてしまいました。

 ただ、試合が終わった後の、あのアグベニュー選手の涙がすべてを物語っていたと思います。普段は勝って畳の上でダンスを見せるほど余裕のあるアグベニュー選手が、最後の最後まで追い詰められた苦しさ、そして勝ち切れた安堵感に涙を見せたのです。確かに今回、田代選手は敗れましたが、去年から今年にかけての実力差はグッと縮まっています。アグベニュー選手は、来年の東京オリンピックで必ず目の前に立ちふさがる相手。だからこそ、今回の決勝が持つ意味は本当に大きかったと思います。

 他にも、今回の世界選手権柔道では、女子は78キロ超級の素根輝選手、男子は63キロ級の丸山選手が初出場で金メダルを獲得したことが、大きな収穫でした。73キロ級の大野将平選手が、4年ぶりの世界選手権で危なげなくオール一本勝ちし圧倒的な力を世界に示したことも、オリンピックに向け明るい未来を感じる結果となりました。

 一方で、女子70キロ級の新井千鶴選手と阿部一二三選手が3連覇、女子57キロ級の芳田司選手が2連覇を達成できなかった点に関しては、世界が日本の柔道を研究し、対応してきているということが改めて浮き彫りとなったと言えるのではないのでしょうか。

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