上村彩子アナが語る北京五輪取材の感動。「ボロボロ泣いた」というフィギュアスケート選手の演技とは (2ページ目)

  • 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

平野歩夢「挑戦」と「選択」の力でつかんだ金メダル

 そして、スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢選手と、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手。彼らふたりの挑戦は、私のなかで強く印象に残るものとなりました。

 平野選手にいたっては、昨夏には東京五輪にスケートボード選手として出場していたのにもかかわらず、たった半年間で最高難度のトリック(技)とされる「トリプルコーク1440」を完璧に決められるまでに調整してきた。これって、本当にすごいことですよね。

 ただ、決勝2回目では、この技を組み込んだ演技を成功させても、前回大会の銅メダリストであるスコッティ・ジェームズ選手(オーストラリア)の得点に及ばないというジャッジ。それでも、最後の演技は2回目と同じ構成で挑み、高さと着地の完成度を上げ、大逆転での金メダル獲得。「怒り」をエネルギーに変えたという、この感情をコントロールする力は、なかなか想像できるものではありません。

 それに平野選手は、まだフロントサイドの「ダブルコーク1620」という大技を隠し持っていて、最後のルーティンに組み込む選択肢もあったはず。この技を披露せずに、もし2回目と同じ構成で滑って失敗したら、とても悔いが残る結果になったと思うんです。それでもやり遂げられたのは、絶対的な練習量や、経験を積み重ねて生まれた大きな自信があったからこそ。さまざまな想いが凝縮された3回目の演技を決めた瞬間は、本当にカッコよかったです。

 その直後、今大会を最後に引退したショーン・ホワイト選手(米国)とのハグも印象的でした。私は前回の2018年平昌大会でのハーフパイプ決勝で、ふたりの戦いを現地で見ていたので、このハグは王者としてのバトンを託したようにも見えました。五輪連覇を目指して、これから4年間のうちに、さらに進化した技を生み出していくのか。そう思うと、平野選手の今後の挑戦がより楽しみになりますね。

 じつは私も年に1〜2度、スノーボードをやっていて、3月のお休みの日にはスキー場に行けたらいいなと思っています。斜面にあるコブに当たってちょっと浮いたり、リフトを降りたりする時もいまだに怖い私ではありますが、平野選手たちの演技を見て気持ちが高ぶっているので、早く滑りに行きたいです!

感染対策のバブル内で過ごした苦労も語った上村アナ(写真=本人提供)感染対策のバブル内で過ごした苦労も語った上村アナ(写真=本人提供)この記事に関連する写真を見る

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