2020.12.05

上村アナがパラカヌー・瀬立モニカのすごさを実感。驚異の筋力と緻密さ

  • photo by Yamamoto Raita

 それでも周囲は熱心にアプローチし続け、瀬立選手はついに練習場へ行くことに。ただ、最初は意欲的ではなかったようで、「転覆するところを見せて、『やっぱり無理です。ありがとうございました』と言えば、周りがあきらめると思っていた」と瀬立選手は当時を振り返っていました。

 しかし実際にやってみると、競技の楽しさを感じて、そこから再びアスリートの道を歩み始める決意をします。ちなみに、その時に用意されていたボートは、自分から飛び込まないと転覆しそうにないとても大きな幅のカヌーだったそうです(笑)。瀬立選手は今では、「あれほど熱心に誘ってくれなかったら、競技に戻ることはなかった」と、当時の周囲のみなさんの粘り強い声かけに感謝していました。

 そして、そこから競技をはじめてからわずか2年後の2016年リオデジャネイロパラリンピックに日本人初の出場を果たし、8位入賞。さらに昨年ハンガリーで開かれた世界選手権で5位に入り、東京パラリンピック出場枠を獲得しました。

 瀬立選手のストロングポイントは、スタートダッシュの速さ。その背景に、厳しい筋力トレーニングに取り組み続けて手に入れた腕のパワーがあります。スタートで他の選手より先行すれば、後続に波を残すこともでき、レースを優位に運ぶことができます。60キロのベンチプレスを上げる腕の筋肉がとにかくすごくて、三角筋はぽっこりと盛り上がっていました。測ってみると腕回りは32.6センチでした!

 一方で、筋力を強化するたび、それに伴って漕ぎ方も変わってくるので、フォームを作り直したり、使用するボートの設定をミリ単位で調整したりと苦労も多いようです。練習ではコーチが電動ボートに乗って瀬立選手のカヌーに伴走して、さまざまな角度からフォーム確認用の動画を撮影していました。障がいで感覚がない部位があるため、映像と自分の感覚をすり合わせる必要があるためです。また、競技用の艇のシート部分は素材や厚さ、角度など、あらゆるところにこだわった瀬立選手専用で「モニカシート」と呼ばれています。

「漕ぐ」という動作は、本当に細かいことを一つひとつ調整していくしかない、途方もない努力の証なのだと感じました。