上村アナの先輩は五輪メダル候補。高跳び博士・戸邉直人のオタクな日常 (3ページ目)

  • photo by Yamamoto Raita

 短距離やマラソンは、競技が終わってから記録がわかる種目ですが、走り高跳びは始める前に「何センチ」と高さが決まっていて、しかもライバルたちの成功や失敗を見たあとに跳ぶこともある。そこにはさまざまな駆け引きもあれば、プレッシャーもある。戸邉先輩は、けっしてすべてが順調に来ているわけではなく、過去には2016年リオ五輪の出場権を逃すなど、悔しい思いもしてきたはずです。

 そんな戸邉先輩の体脂肪は4~5%。高跳びのために体重は意識的に絞って無駄はそぎ落としています。筋トレも、たとえば片足の一部を重点的にするなど、強化の必要な筋肉の部位を自分で研究して分析しているのです。

  コーチはつけずに、大学で自分自身を研究材料にしてトレーニングを続けて、自分の競技の映像を自分の目で見て、分析してデータを取り、分析結果を根拠にして、問題点を理解したうえで競技と向きあう。2016年に亡くなった大学の恩師・図子浩二先生からは「根拠を持ってやることが大事」とずっと言われていたそうです。

 研究室には、踏み切り時の圧力を測るボードなど、たくさんの機器があって、跳躍の時の角度、ひざや股関節の角度や、跳躍の瞬間にかかるGがどのぐらいかなどを計測。戸邉先輩は、そのすべてを使いこなしてありとあらゆるデータを集計していました。

 トレーナーやコーチであれば、選手にそうしたデータを伝えて、実践させることが役割になりますが、戸邉先輩は1人で全部をやっている。「むしろそれが好きでやっている。高跳びオタクですね」と、自分で認めています。

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