【竹内由恵】メダル奪還へ。井村雅代コーチの手腕で日本シンクロは復活するか? (2ページ目)

 シンクロを取材してとくに印象に残っているのが、13年の世界水泳(バルセロナ)で見た乾友紀子選手の表情です。それまで、シンクロの選手に対する印象は「自分の演技に集中していて、あまり感情を表に出さない選手が多い」というものでした。しかし、その大会のソロとデュエットで5位、チームとフリーコンビネーションは4位に終わってメダルを逃した乾選手は、これまで見たことがないほど悔しがっていたのです。

 日本のエースであることを自覚し、「自分はもっとできるはず。このままじゃいけない」という思い、メダルに手が届かなかった自分への不甲斐なさがその表情から滲み出ていました。

昨年、日本代表のヘッドコーチに復帰した井村雅代コーチ photo by YUTAKA/AFLO SPORT昨年、日本代表のヘッドコーチに復帰した井村雅代コーチ photo by YUTAKA/AFLO SPORT そんな乾選手のことを、井村コーチは常に気にかけていました。2012年、中国チームのヘッドコーチとして臨んだロンドン五輪では、井村コーチは乾選手と小林千紗選手のデュエット予選のフリールーティーンをじっくり見たとき、こう思ったそうです。「あの子たちは何であんなにこわごわと泳いでいるのだろう――」。

 ただ、中国のコーチという立場もあって、井村コーチはそのときすぐに伝えたかったアドバイスを乾選手には言いませんでした。すると、選手村に帰るバスで、井村コーチはたまたま乾選手と小林選手と一緒のバスになり、ふたりから「アドバイスをください!」と頼まれたのです。

 井村コーチがふたりにかけた言葉は「五輪なんだから、探りながら泳いではいけない。あるものを全部出すのが五輪!」というものでした。それを肝に銘じて決勝を泳いだ乾選手と小林選手は、結果こそ5位でしたが納得できる演技ができたといいます。

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