世界記録への挑戦。再びトップを目指す入江選手の進化 (2ページ目)

photo by Hirano Takahisa/AFLOphoto by Hirano Takahisa/AFLO 昨年の入江選手は、負けたくないという思いが焦りにつながり、泳ぎがうまくいかなくなる悪循環に陥ってしまうレースが続いていました。しかし、「負けるのが怖いという気持ちが強かった」と話していた入江選手が、今年の日本選手権では強気の泳ぎを披露。

photo by Yamamoto Raitaphoto by Yamamoto Raita 100mでは前半をこれまでより速いテンポで入ると、昨年の世界水泳のマット・グレーバース選手(アメリカ)の優勝タイムを0秒36も上回る52秒57の好記録で優勝を果たしました。「水をしっかりつかめるようになり、スピードの出し方がわかるようになって、スーっと泳げた」と話していました。200mでは、萩野選手に追いあげられたラスト50mでフォームが崩れたといいますが、それ以外はイメージどおりに泳げていたことが好記録につながったのだと思います。

 過去、レース後に涙を見せることもあった入江選手ですが、今年はレースの前からハッキリと「萩野選手には負けたくない」と宣言するなど、戦う気持ちが前面に出ていました。今回の日本選手権で、周囲の選手たちが「陵介さんはこれまでとは何かが違う」と言っていたように、日本代表チームの若手を引っ張る存在になっています。

 そんな入江選手が日本選手権のレース後に口にした、とても印象に残っている言葉があります。

「止まっていた時計を動かすことができた」

 入江選手の自己ベストは50m、100m、200mのすべてが高速水着で泳いだ09年の記録。高速水着が禁止になった10年以降はその記録を破れずにもがいていました。入江選手自身、「自己ベストを意識するのではなくノーマルの水着になってから何番目の記録、と考えるようにしていた」と、09年の記録と向き合うことを避けていたのです。

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