世界記録への挑戦。再びトップを目指す入江選手の進化

 8月にオーストラリアのゴールドコーストで競泳のパンパシフィック選手権が開催されます。その代表選考会となった4月の日本選手権の取材に行ったとき、最も印象に残ったのが男子背泳ぎの入江陵介選手の優勝でした。

photo by Yamamoto Raitaphoto by Yamamoto Raita 入江選手は、2012年ロンドン五輪の200m背泳ぎと400mメドレーリレーで銀、100m背泳ぎでも銅メダルを獲得。しかし、昨年の日本選手権は200mでは優勝したものの、100mではロンドン五輪400m個人メドレーで銅メダルを獲得した19歳、萩野公介選手に敗れていました。

 さらに、昨年8月のバルセロナでの世界水泳では100m、200mともに4位と不本意な結果。「去年1年間はどん底だった」と本人が話していたように、ミックスゾーンでは引退をほのめかす発言をするほど落ち込んでいたのです。

 その気持ちが切り替わるきっかけになったのが、東京五輪・パラリンピック招致団の一員としてブエノスアイレスに行き、東京開催決定の瞬間に立ち会ったことだったといいます。「やっぱり、リオデジャネイロ五輪に選手として参加したい」という思いを胸に帰国し、トレーニングを開始したのです。

 ところが、今度はヘルニアになるというアクシデントに見舞われてしまいます。今年1月までは腰に負担がかかるためターンとバサロキックの練習ができない状態でした。それでも、体幹トレーニングなどこれまでとは違う練習に取り組むことで、自分の体のことをより意識するようになったそうです。

 また、治療を続けている間に、これまでの自分の泳ぎの映像を繰り返し見て、ある欠点に気づいたといいます。それは、バサロキックからの浮き上がった直後の2掻きで減速していることでした。

 そして、今年の日本選手権ではその欠点を修正。バサロキックからの浮き上がりで、萩野選手を突き放すスムーズな泳ぎを身につけていました。一緒に泳いだ萩野選手も「陵介さんは去年とは別人のよう」と驚いていました。

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