「人生最後の五輪」ソチの舞台に立つ髙橋大輔の秘めたる思い (2ページ目)

 髙橋選手はバンクーバー五輪のメダリストとして、また、2010年3月の世界選手権の王者として、チャン選手と比較されるようになりました。そのとき髙橋選手は、「調子が上がらなくてそのシーズンは中途半端に終わった。チャン選手に負けたくない。このままでは終われない」という気持ちになり、「五輪や世界選手権でメダルを獲ったことを忘れて、白紙にしよう」と現役を続ける覚悟を決めたのです。

photo by Yamamoto Raitaphoto by Yamamoto Raita 引退を考えていたころの髙橋選手は、メディア全体のフィギュアスケートへの関心が「下がり始めた感じがしていた」といいます。だからこそ、まもなく引退する選手という周囲の見方をはね返すためにも、フィギュアスケートという競技を盛り上げるためにも「ソチ五輪を目指す」と宣言したのだと思います。

 そこからソチ五輪までの3シーズンを「ひとつのブロックととらえた」髙橋選手は、「やることはたくさんあるし、いろいろ挑戦できる」と考え、クラシックバレエをトレーニングメニューに追加し、アイスダンスのコーチにスケーティングを習いに行くなど、それまでできなかったことにチャレンジしていきました。

 それでも、「トリノやバンクーバーのときは、まだ成長の余地がある。行ける」と思っていたのが、「27歳になると自分の成長を疑ってしまうこともある」といいます。そんな髙橋選手に今シーズンも刺激を与えてくれる存在は、やはりパトリック・チャン選手です。「彼がいたからここまでいろいろ変えることができた」という言葉にそのことがよく表れています。また、今回のソチ五輪のシーズンは、若い選手が次々に出てきて成長してきているため、「一番厳しい五輪です」と気持ちを引き締めています。

 髙橋選手は、今季のGPシリーズ第1戦のアメリカ大会(昨年10月)で4位と出遅れました。試合後「12月のファイナル進出は難しいかもしれないけど、とりあえずは自信を取り戻すために、次のNHK杯(11月)に向けて、ガムシャラに練習をしなければ」と話していました。

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