世界陸上で垣間見たイシンバエワ&ボルト両選手の素顔 (2ページ目)

 いつものように帽子を目深にかぶり、顔にタオルをかけて寝ている姿を見て、「本来のイシンバエワの調子が戻ってきた!」と心が躍りました。

 イシンバエワ選手が4m89を1回目で跳んだ時点では、サー選手の方が失敗試技回数の差で上位。しかし、サー選手が3回失敗してイシンバエワ選手の優勝が決定したのです!

 その瞬間、今まで見たことがないほど無邪気にとび跳ねて喜ぶイシンバエワ選手。現在31歳、今まで何回も世界一になっているロシアの国民的大スターが、人目やカメラなど一切気にしないで感情を爆発させるその姿に感動しました。

「もう競技から離れて、子どもを産みたい」という発言もしているように、女性としてはこれからのことを考える年齢です。さまざまな葛藤があった中で、地元ロシアでの世界陸上に出場したのだと思います。

 優勝が決まった後の5m07の世界記録への挑戦も見事でした。結局失敗してしまいましたが、体もしっかり上がって可能性を感じさせる跳躍でした。満員の観客が彼女だけに注目。「もうピークは過ぎた」という評価を、好パフォーマンスではねのけたのです。

 試合後のインタビューで「あなたの心を射止めたラッキーな恋人は誰なの?」という質問に、「シークレット」と可愛く答えて、「子どもを産んだらまた競技に戻ってくるわ」とさらりと言っていた切り替えの早さも彼女の魅力だと思います。

 翌日の表彰式には髪の毛を綺麗にセットして登場。思わず見とれるほどの美しさでした。そして、涙を流している姿が、勝った時の喜び方と対称的だったので、その涙にこれまでの辛さやうれしさ、すべてが凝縮されているのだと感じました。今大会、いちばん感情を揺さぶられたシーンでした。

 そして、今回の世界陸上のもうひとりの主役は、もちろんウサイン・ボルト選手。100m決勝は、スターティングブロックについた時に雨が振り始め、稲妻も光り出す空模様。「天も味方につけた演出?」と鳥肌が立ちました。そして、見事1位でゴール。記録は9秒77で世界記録には届きませんでしたが、その強さを見せつけてくれました。スタート前のレーン紹介の時にはお茶目な顔をして傘をさすような仕種(しぐさ)をするなど、余裕十分。「ハートの強さも怪物級。ライバルたちは敵わないだろうな」と思いました。

 また、200m決勝では、観客席にボルト選手のご両親がいるというので、そこへ行って一緒にレースを見ることができました。ご両親はふたりともすごく真面目な印象。息子さんの2冠がかかっているレースを前にしても、あまりテンションが上がっていない様子で、「私が盛り上げたほうがいいのかな?」と思うほど。

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