2013.07.03

ソフトボール・上野由岐子の五輪への熱い想い

 五輪競技から野球・ソフトボールが除外されることは北京五輪が開幕する前に決まっていましたが、上野選手は「北京五輪が終わるまで目の前のことに必死だったのであまり実感はなかった」そうです。

 また、金メダル獲得によってソフトボールの注目度が高まり、さまざまなメディアに取りあげられ、試合にはそれまでとは比べ物にならないほどたくさんの人が観戦に来るようになりました。でもしばらくすると、観客数は減り、取材に来るメディアも激減。サーッと潮が引くようにすべてが消えてしまった時、上野選手は「こんなにも違うのか」と寂しくなったといいます。

photo by Yamamoto Raita 昨年、ロンドン五輪前にはソフトボールの世界選手権が開催され、日本はあのアメリカを破って優勝しました。それでも、メディアでの扱いは北京五輪のときよりずっと小さいものでした。そうした、報道する側の姿勢は、私も取材する側としてしっかりと考えなくてはいけないと強く思いました。

 北京後、上野選手自身は金メダルという目標を達成したことで燃え尽きた面もあったといいます。今後どうしたらいいのか考えていたそんな時、宇津木麗華監督の「これからはソフトボールに恩返しをしなさい」という言葉で、気持ちが切り替わったといいます。

 今回の取材でも、「それまでは、『自分が、自分が』という気持ちが強かったのですが、若手とどう接していくかをより意識するようになりました。それに、バックで守ってくれている人や、ヒットを打って点を取ってくれる人がいるからこそ勝てる」と、チームメイトへの気持ちを何度も口にしていました。

 また、「最近はショートも守るので『ボールを取るのはこんなに大変なのか』とわかるようになって新たな発見もありますし、ソフトボールを純粋に楽しんでできるようになった」と話していたことがとても印象に残っています。

 五輪の正式競技選考について「ヨーロッパではまだソフトボールの認知度が低いので、それを高くすることも課題」と語る上野選手は、「何がなんでも復帰してほしい。キャッチボールでボールに思いを込めて投げれば相手にもその思いは伝わるもの。自分があきらめずに頑張っている姿を観客や子どもたちに見せ続けることが一番大事」と前を向いています。

 上野選手は本当に前向きで、ネガティブなことはいっさい口に出さない。晴れの日だけではなく、雨の日も台風の日も知っている。だけどその真夏の太陽のような笑顔で、周りに青空の下でくつろいでいられるような安心感を与える、たくましく清々しい人。そんな素敵な上野選手に、またお話を聞きに行きたいと思っています。

構成/折山淑美

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