エムバペ、ネイマールのドリブルは相手を見ているから抜ける。元日本代表・石川直宏が極意を解説

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

スポルティーバ足ワザファイル 第3回

世界トップレベルのサッカースターたちの華麗なテクニックは、どういうカラクリで繰り出されているのか。その詳細を解説していく。今回は、FC東京の快足ドリブラーとして活躍した石川直宏氏が登場。2021-22シーズンに欧州サッカーで見られた数々のテクニックを実演・解説してもらった。

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「エムバペも相手やスペースの状況を見てドリブルしている」と石川氏 photo by Getty Images「エムバペも相手やスペースの状況を見てドリブルしている」と石川氏 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る【動画】石川直宏実演! シザーズ&連続タッチの足ワザ集

ドリブルは抜いていくイメージが大切

 スピードを生かしてドリブルで勝負を仕掛けていくのは、僕の昔からのプレースタイルです。そのドリブル勝負で大切なのは、イメージだと思っています。

 ドリブルはボールを前へ運び、相手をかわしつつ、フィニッシュの手前まで持ち込んでいくのが仕掛けの流れです。

 フィニッシュまでの過程で、スペースへ運んでいく時に相手がどのように出てくるのか、どこにスペースがあるのか、GKがどこにいるのか。そうした周囲の状況を見ながらどのようにドリブルしていくか、イメージをしながら相手を誘う。それが大切なことになります。

 その時にちょっとスピードを落としてみたり、相手にボールをさらしてみたり、シザーズでボールをまたいでみたり。相手がこちらに食いついてくるような駆け引きをすることで、自分が仕掛けるためのタイミングを作っていきます。

 ドリブルでの駆け引きや足ワザはさまざまありますが、そのなかでもダブルタッチは一番気持ちよくて、子どもの頃からよくやっていた足ワザのひとつでした。ダブルタッチは、基本的に相手が食いついてきたところでボールを手前に引いたり、横にズラしたりしてから、素早い2タッチ目でかわしていくワザです。

 スピードがある僕にとっては、ドリブルする時に相手が食いついてきてくれたほうがよくて、しかも相手がふたりなど複数で来てくれたほうがよりチャンスを作れると思っています。そうした相手が複数で来た場合にも、ダブルタッチは有効なワザです。

 相手がふたりの場合、相手同士の守る範囲が重なる瞬間があり、その時、どっちがチャレンジにいくのか迷いが生まれます。この瞬間に、こちらはダブルタッチでボールをズラしながら、ふたりの間を抜いていく。ひとりの相手に対してだけではなく、こうした複数相手の駆け引きにも使えるのが、ダブルタッチの魅力のひとつだと思っています。

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