日本人がやりがちなスポーツメンタルの5大NG。「緊張しない!」はかえって不安になる

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

大一番での緊張や不安。スポーツをやってきた人なら一度は経験したことのあるこの気持ち。トップアスリートからも、普段、プレッシャーの克服に対するコメントが多く聞かれる。メンタル面のコントロールには様々な方法があるが、安易な取り組みはかえって失敗しやすく、沼にハマってしまうことも。今回はスポーツメンタルの専門家である作新学院大学の笠原彰教授に、日本人がついやってしまいがちな、メンタル面での5大NGを挙げてもらい、その対処法を聞いた。

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緊張や不安を克服するためには何が必要なのだろうか緊張や不安を克服するためには何が必要なのだろうかこの記事に関連する写真を見るNG-1
「緊張しない!」と意識する

 よく選手から「緊張しないようにするにはどうしたらいいか」「リラックス法を教えてほしい」というリクエストをもらいます。しかし、最近のスポーツメンタルは「緊張した状態に気づきながらパフォーマンスを発揮する」というのが主流です。

 緊張の第一条件は"重要な試合"で、重要な試合と緊張はセットになっています。重要な試合で緊張しないというのは、そもそも無理難題なわけです。実際、東京五輪に出場した多くの選手たちが緊張していました。

 そこで緊張をなくそうというほうに意識が向くとプレーに集中できなくなり、「緊張しないように」と唱えてしまうと"逆説的思考侵入効果"といって"緊張"というワードに脳の意識が向いて、余計緊張することにつながってしまいます。

 大事なのはその緊張した自分の状態を客観視して、それを受け入れた上でプレーすることです。ではどうすればいいかというと「相手に関係なく、確実にやれることをやる」ということです。

"CSバランス"という言葉があります。Cはチャレンジ、Sはスキル。両者のバランスがいい時、つまり「確実に実行できる目標を忠実に実行している時」に、"フロー"という最高の心理状態に入りやすいのです。フローは"ゾーン"とも言われます。

 例えば「ボールを見る」「チームメイトとコミュニケーションを取る」といった、相手に関係なく確実にやれることに意識を向けるとCSバランスが取れ、"ゾーン"に入る可能性を高めてくれます。

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