大坂なおみ、待ちに待った全米OP。初優勝した2年前の再現なるか (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 また、大坂にとって心強いのは、この6月にチームに雇い入れたストレングス&コンディショニングコーチの中村豊氏の存在だ。

 中村氏といえば、約7年にわたってマリア・シャラポワの専属トレーナーを務め、フットワークに難ありと言われた長身の強打者に2度の全仏オープン優勝をもたらしたことで有名。「彼女はテニス界でも5指に入るアスリート能力の持ち主」と大坂の潜在能力に惚れ込む中村氏の手腕が発揮されれば、多少の試合勘の欠如はフィジカルで十分に埋めることができるだろう。

 その他の日本勢では、シングルスに日比野菜緒と土居美咲が参戦。コロナ禍の間にも比較的、練習環境を確保できていた日比野は「早いタイミングでボールを捕える」テニスに取り組んできたという。「ランキングポイントは気にしてない。練習の成果が発揮できるかどうかが楽しみ」というメンタリティがプラスに働けば、自己ベストの戦績も期待できそうだ。

 男子は、ウェスタン&サザン・オープンが中断以降初のATPツアー大会となるため、皆が横並びのスタートを切る。また、上位選手の多くはエキシビション等で公式戦さながらの試合を経験しているため、勢力図にそこまで大きな変化は見られないだろう。

 優勝争いの中軸となるのは、1月の全豪オープン決勝で死闘を演じた世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と3位のドミニク・ティーム(オーストリア)。昨年の全米準優勝者のダニール・メドベージェフ(ロシア)や、トップ10最年少のステファノス・チチパス(ギリシャ)ら新勢力がそこに絡んでいく形となる。

 そのなかで不確定要素となり得るのが、制約が多い今大会のシステムだ。

 男子のグランドスラムでベテラン勢が圧倒的な強さを誇る訳は、5セットマッチの2週間という長丁場では試合のない日の過ごし方など、ルーティーンや経験、チームスタッフの充実度などがモノをいうからだと言われる。その日常が、今大会では大きな変容を強いられる。番狂わせの要素が潜んでいるとすれば、この点だ。

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