渋野日向子が全英連覇に挑む。牙をむく最大の敵は何か? (2ページ目)

  • 武川玲子●文 text by Takekawa Reiko

 ただし、それは決して簡単なことではない。

 今年のコースは、スコットランドの北西にあるロイヤル・トゥルーンGC。1878年に設立された歴史あるリンクスコースで、西に望むクライド湾から風が吹けば、選手たちに容赦なく牙をむく難コースである。過去に9度開催された男子の全英オープンでも、名だたるトッププレーヤーたちが苦闘を強いられてきた。

 連覇を目指す渋野としても、そのコース攻略が最大のカギとなる。そのため、本来であれば、十分な準備をして臨みたかったはずだ。しかし今年は、コロナ禍という異例な状況。国内ツアーもなかなか始まらず、思いどおりに事を運ぶことができなかったのではないだろうか。ようやく再開したアース・モンダミンカップでも予選落ちに終わり、全英AIG女子オープンの前哨戦となったASIスコットランド女子オープンでも実力を発揮できず、こちらも決勝ラウンドに進めなかった。

 それでも、ツアーの中止が続くなか、「ボールは毎日打ってきた。トレーニングで体重も増えた。久しぶりの試合は緊張するけど、楽しみ」という渋野。厳しい状況のなか、内に溜めていた活力や気持ちを、全英AIG女子オープンの舞台で一気に爆発させてくれるのではないか。

 また、初の海外遠征となった昨年は、「プレーオフになったら、負ける気がした。だから、強気に打った」と、ウイニングパットについて語った彼女。失うものはなく、"イケイケ"の怖いもの知らずの状態で臨めたことが、功を奏した面もある。それが一変し、今年は周囲からの期待やプレッシャーもあるが、初めて挑むリンクスの大舞台。のしかかる重圧をはねのけて、昨年と同様、楽しんでプレーできれば、再度チャンスが巡ってくるかもしれない。

 渋野とともに、世界ランキング5位の畑岡奈紗も大いに活躍が期待される選手のひとりだ。前哨戦のASIスコットランド女子オープンでは健闘し、最終的に12位でフィニッシュしている。

 昨年は「メジャー初制覇」を目標に掲げながら、まさかの予選落ち。結局、シーズン5大会あるメジャーのうち、3大会で予選落ちを喫して「想定外」と悔しさをにじませた。その分、「今年こそ」という思いは強いはずだ。

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