ブラジル代表の名選手が「神」と称えたスパイク。モレリア開発秘話 (3ページ目)

  • text by Sportiva
  • photo by MIZUNO


 幸運だったのが、日本人選手として初めてブラジルでプロサッカー選手となった水島武蔵との出会いだった。彼は名門サンパウロでプレーし、のちにサントスにも在籍した海外組の草分け的存在だ。ミズノは水島とアドバイザー契約を結び、彼からさまざまな情報を入手した。

「最初の驚きは、(ブラジル人選手は)足の裏をよく使うこと、キックは指先を使うこと、裸足でボールを扱うような感覚が必要だというアドバイスでした。タイトなフィットは必要だが、足指は自由に動かせないとブラジル人が求めるスパイクにはならない。スーツのポケットに折り曲げて入れることができるほどの軽さと柔らかさが欲しいと。それは本当に驚きでした。それまでの迷いがすべて一掃された感じがしました」

 さらに、ブラジルで苦闘する水島の「もっとうまくなりたい」という情熱にも動かされた。ブラジル人選手がスパイクに求める要素、そして水島の想いを胸に安井は無我夢中で開発に取り組んだ。

「最初のサンプルのソール図面は自ら作成しました。デザインも自ら作り、アッパーのパターンも作成。そしてサンプルを作っていただきました。その後、何度も試行錯誤を繰り返して試作を行ない、自ら試し履きも行なって改良を進めました」

 そして完成したのがモレリアだった。安井は、その履き心地、フィット感に自分でも驚愕した。モレリアは非の打ち所がないほど完璧に近いスパイクだった。それは、水島はもちろん、そのほかのブラジル人選手たちも実感した。

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