ラグビー日本代表、W杯33試合から選ぶ「後世に残したい、あの一戦」

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji
  • photo by Getty Images


 もちろん、ジョーンズHCが4年間かけて磨いてきたパスラグビーも勝負どころで発揮された。

 29-32で迎えた後半35分、日本代表は自陣から20次攻撃のパスラグビーでボールを継続。敵陣奥深くまでボールを運ぶことに成功する。ワンパス(ひとつのパスでランする)でのアタックは、南アフリカ代表を確実に脅かした。

 そして最後のWTBカーン・ヘスケスの逆転トライも、スクラムを起点にパスを回してのトライだった。3年間、スキルを主に指導したスコット・ワイズマンテル コーチは試合後、感慨深くこう語っている。

「日本代表は世界で最もパスラグビーができるチームになった」

 入念な準備、大胆な戦略変更、そして4年間磨いてきたパスラグビー......。さまざまな要因が積み重なって、南アフリカ代表から大金星を奪った。だが、最後にもうひとつ勝利に欠かせなかったのは、W杯に強い指揮官ジョーンズHCの「名采配」だろう。

 後半4分、南アフリカ代表にトライを許してコンバージョンゴール(CG)も決められ、13-19と逆転されると、ジョーンズHCはNo.8をツイからアマナキ・レレィ・マフィに交代。すると、マフィの勢いに押されて相手は反則を犯し、五郎丸が後半9分、13分と立て続けにペナルティゴール(PG)を決めて19-19の同点に追いつく。

 同点になっても、ジョーンズHCの動きは止まらない。後半14分には右PRを畠山健介から山下裕史に、LOを大野均から真壁伸弥に替えた。その後19-22と再びリードされると、後半18分に左PRを三上正貴から稲垣に交代。さらに後半27分には、ゲームのテンポを上げるためにSHを田中から日和佐にチェンジした。

 すると後半29分、途中出場の山下がビッグタックルで相手の反則を誘い、敵陣25メートルでラインアウトを得る。そのチャンスからサインプレーで五郎丸がトライを挙げて、CGで29-29と再び同点に追いついた。

 それでもなお、ジョーンズHCは止まらない。残り10分でHOを堀江から木津武士に、残り7分でSO(スタンドオフ)を小野から田村に、残り1分でWTBを山田からヘスケスに交替した。

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