取材記者が選手の一挙一動に注目。双眼鏡越しに見る重要なポイント (2ページ目)

  • text by Sportiva
  • 杉浦大介●写真 photo by Sugiura Daisuke、shutterstock


――NBAを観るときに、どんなところに注目していますか。

「これは取材するゲーム、チーム、選手次第。注目するポイントはその日によって違います。例えば最近の試合になりますが、ニューヨーク・ニックスが低迷しており、12月上旬にヘッドコーチ(監督)が解任された直後のゲームを取材しました。新しいヘッドコーチが暫定的に指揮を執ったゲームだったので、戦術が上質でないのは仕方ない。そこで注目したのは、厳しい状況下での選手たちの姿勢。ボディランゲージ、コミュニケーションなどでした。それを双眼鏡で確認していました。

 その他、例えば昨シーズンMVPのヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)、ダラス・マーベリックスで売り出し中のルカ・ドンチッチのような選手を取材する際は、やはり彼らの個人技と周囲の評価に注目します。30代半ばになったレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)の場合、オフェンスよりも、むしろディフェンス面でどれだけ献身的にプレーしているか。また、八村選手の出場試合では、必然的にその一挙一動、どの面で成長しているか、どんな点で向上の余地があるのかなどに注目することになります」

――バスケットボールを見る際、双眼鏡をどんなときに使って、どんなポイントを見ていますか。

「最近のNBAでは記者席がコートから遠くに設置されることが多く、選手がベンチにいる際の表情を肉眼で見るのが難しくなりました。プレーよりも、主に両チームのベンチの動き、表情を見る際に使用しています」

――双眼鏡を使うことで、どういうメリットがありますか。

「八村選手の例になりますが、『八村塁は好調時も不調時も同じような姿勢でプレーに臨むことができる選手』と、ウィザーズ内ではすでに評判になっています。実際にベンチにいる際の八村選手は常に戦う姿勢を保ち、自身がプレーしない時間帯でもチームメートたちを鼓舞している。一時期、第4クォーターの勝負どころでプレーできないゲームが続いたのですが、そんな時期にも同じような態度で臨み、集中を切らしていないことが、双眼鏡でよく確認できました」

――取材記者ならではの視点で、こんな場面を見ているというポイントはありますか。

「最近のテレビは、多くのアングルから映像を流しているので、プレーに関してはテレビでも十分だと思います。ただベンチでの姿や、あるいはロッカールームでの姿にも様々なストーリーがあります。

 バスケットボールは1人選手が代わるだけでカクテルのようにチームカラーが変わる本物のチームスポーツ。チームのケミストリーが大きな意味を持ってきます。それがすべてではなく、あくまで1つの視点ですが、プレーしていない時の姿から何かが見えてくることもあります。そして、その何かはチーム、選手によって違いますので、そこも注目すべきポイントとして見ています」

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