ベイスターズ激動の1年を収めたドキュメンタリー映像作品が公開 (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by ©Yokohama DeNA Bay Stars

 どこの世界でもリーダーは孤独だ。しかし誰かが率先して務めなければドラスティックな変化は望めない。キャプテンになって5年。筒香がリーダーとして牽引した時代を振り返れば、チームは確実に強くなっている。

 キャプテンになって3年目のある時、筒香に聞いたことがある。リーダーとは、一旦感情を胸にしまい冷静にならなければいけない存在だ。たとえば、チームが敗れ雰囲気が悪くなれば自ら率先して声をかけ、切り替えを促す。逆に勝利して浮足立っていれば、油断するなと釘を刺さなければいけない。

「孤独であることは当然だし、それをやるのが当たり前。とにかく、このチームで勝ちたいし、優勝したいから、自分としては大変だとは思っていないんです」

 筒香はそう言い、さらに続けた。

「皆、勝ちたい、負けたくないと言うけど、じゃあ勝つためにはなにを考え、どうやってプレーすればいいのかについて明確に答えることができない。だからこそ僕は声をかけていきたい」

 この筒香の言葉から数年、果たして若い選手たちは、どんな答えを導き出したのだろうか......。

 悔しさを乗り越え、喜びを分かち合い、個性の異なる選手たちが今季勝つことの重要性を胸にプレーをする。映画の中では、勝負どころとなる終盤に筒香の発案によって生まれた『一生残る、一瞬のために』というスローガンの真相や、またある選手の知られざる事実も露見し、驚かされることも多々あった。

 最大の見どころは辻本監督いわく、初めて横浜スタジアムで開催されたクライマックス・シリーズ(CS)だと言う。

 つまり『筒香嘉智、最後の3日間』。

 阪神を相手に逆転負けやサヨナラ勝ちがあった劇的ではあるものの息の詰まるような試合、多くの人たちの勝ちたいという思いが交錯するダグアウト、そしてチームに身を捧げてきた筒香の口から出た最後の言葉とはいったい......。

「僕の距離感で見えたものは、すべて詰め込むことはできたと思っています」

 辻本監督は、そう断言する。

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