伊達公子が若い子に伝えたい「トレーニングと用具選びの重要性」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • TOBI●撮影 photo by TOBI

 小浦さんからはまず、『身体が硬い。柔軟性をつけないとケガをする、フルシーズン戦えない』と言われ、そこから始めました。また私はもともと華奢(きゃしゃ)だったので、身体を大きくすることに悩んでいて、プロになると決めたころから身体を大きくする取り組みをしていました。

 ただ、実際に海外に出たときは、欧米選手たちのそもそもの骨格の大きさに戸惑いを覚えたし、パワーの差を感じて......。そのなかで『ライジング』が生まれるわけです。

 トレーニング法は、当時は『自重』などの考え方もなかったので、ウェイトを使うのが中心でした。ただ、そこで練習量を多くして試合数を増やすと、身体を壊しかねない。ですから、そのへんはバランスを考えるようにもなりました」

 伊達がプロになりたての1980年代後半は、今に比べて科学的なトレーニング法が確立していなかったのはもちろん、日本では情報を入手するのも困難だった。ただ、そのなかで小浦氏は、いち早く世界に目を向け、さまざまな最新トレーニング法や器具なども導入していたと、伊達は懐かしさと親しみを込めた笑顔で明かす。

「小浦さんの場合は、むしろ早すぎたところもあったと思います。時代の先を行き過ぎていたというか......飽き性というのもあるんですが。動体視力を鍛えるために、(マルチナ・)ナブラチロワが使っていた6つのランプが点灯する機材を数百万かけて買うんですが、1年も使わないという!

 小浦さんからたくさんの情報と知識をインプットして、そのなかから自分に必要なものは取り入れ、要らないものは聞き流す......という、そのあたりを見極める力は、自分で徐々につけたと思います」

 若いころは入ってくる情報をあれもこれもと詰め込みすぎ、「爆発して(地元の関西から)東京に出てきた形だったので」と伊達は笑う。自分に何が必要なのかを選別するその能力が、いずれは重要になってくると彼女は説いた。

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