ミロシュ・ラオニッチが原宿に出現。明晰な頭脳で語る「日本の美徳」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ニューバランス原宿店の入り口をくぐり、店内に足を踏み入れたその瞬間から、彼は周囲の視線を一身に集めた。196cmの長身は、自ずと人々の目を引く。長い手足と引き締まった肉体は、言葉ではなくとも、彼がアスリートであることを物語った。

ニューバランス原宿店に訪れたミロシュ・ラオニッチニューバランス原宿店に訪れたミロシュ・ラオニッチ「あれ、ラオニッチだ!」

 その姿を目にとめた少年たちが、興奮で目を輝かせながら......しかし遠慮気味に、決して邪魔にはならぬよう少し距離をおいて、彼の後ろをついて歩く。

 そのような日本人の立ち居振る舞いを、そして文化を、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)はこよなく愛していると言う。

「日本の親は子どもたちに、物事の価値や礼儀、人間性をしっかり教えているのだと思う。それが、日本の文化の何よりもすばらしいところだと僕は感じているんだ。日本人は非常に勤勉で、謙虚であり、他者に敬意を表し、自らのエゴや傲慢さを表に出すことがない。それらは、おそらくは親が子どもを育てる過程で日本人や社会全体に浸透していく、普遍的な価値観なのだと思う」

 明瞭かつ聡明な口調で、ラオニッチは自らが抱く日本の印象を、そして彼自身が大切にする価値観や哲学をよどみなく語る。それら"勤勉さ"や"謙虚さ"こそが、ラオニッチとニューバランスを強固に結びつけた絆(きずな)であり、キーワードでもあるものだ。

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