ますだおかだ増田英彦が愛する阪神に危機感「すべてアカンほうに出ている」。それでも信じる矢野監督のメークポエム!?

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Sankei Visual

ーーどのように楽しむつもりですか?

増田 やっぱり大逆転での優勝を夢見ますよね。1996年に巨人が11ゲーム以上の差をひっくり返して、"メークドラマ"と言われましたけど、ここから阪神がもし優勝するようなことがあったら、それをはるかに超える偉業だと思います。矢野監督が優勝を成し得ることができたらどういったネーミングをつけるか、僕なりに考えたんですけど......ここは"メークポエム"やと!

ーーえっ、"メークポエム"ですか!?

増田 矢野監督は言葉が好きなんですよ。以前、チームの調子が悪い時、試合後のインタビューで状態を聞かれ、「雲の上は青空です」と言ったり、今年も初勝利の際に知人からいただいたという「波」と書かれた色紙をファンに見せたりしました。矢野監督はポエムが好きだから、メークポエム。実現できたら本当に感動すると思うんですよね。そして、素敵な詩を残して、最後は監督をやめるわけですよ。

すべては矢野監督のフリなのか?

ーーなるほど。矢野監督はキャンプ前に辞任することを発表しましたが、どのように受け止めましたか?

増田 まあ今じゃそれさえも、メークポエムのフリだと思っているんですけど、僕はあまりネガティブには捉えませんでした。矢野監督の人生ですし、考えたうえでの結論だったでしょうからね。ただ思うのは、先ほども触れましたが、矢野監督のやり方っていわゆる"王道"ではないんです。僕はあえてオーソドックスな野球をしていないと思っているんです。ある意味、矢野監督は結果を出さないと褒めてもらえないようなやり方をしている。

ーーつまり、結果が出なければ叩かれる。

増田 はい。以前インタビューした時も、「選手の自主性を尊重する」と言っていました。矢野監督はバリバリの昭和のスポーツ選手で、現役時代は厳しさの渦中にいたわけですよ。だから最初はピリッとした厳しい指導者になると思いきや、前任の金本知憲さんとは真逆に舵を振り切ったんです。

 最低限の厳しさはあると思いますが、それでも選手に優しく、一緒になって楽しんだりしている。そんなことをしていて結果が出ないと、「だから勝てんのや!」って言われるわけですよ。厳しくやっていれば、「選手がアカンねんな」ってなるのに。たぶん、矢野監督は真逆に振りきるくらいでないと優勝できないと覚悟を決めて、監督に就任したんだと思います。

ーー矢野監督は、昔気質の"ボス型"の監督ではなく、選手と同じ目線を持つ"リーダー型"の監督だと。

増田 以前から矢野監督を知っている身からすれば、あえてそうしていると思うんです。若い選手にとってはありがたい部分はあると思います。チャンスをたくさんくれるわけですから。とはいえファンから見れば、そんな彼らを使って「打たれるから、ここで代えなきゃアカンよ。ほら、打たれたやん!」ってシーンも多いわけです。けど矢野監督のなかでは選手を育てたいという強い意志がある。代えるのは簡単やけど、ピンチを乗りきった時こそ成長するんやって。

 たとえば、浜地真澄投手や小川一平投手、及川雅貴投手などは、監督1年目からがんがんチャンスをあげて打たれることもあったけど、ここに来てその経験が生かされつつある。それは若い野手たちも同様で、ある程度の失敗に目をつむりながらも若い選手の個々の能力を上げないといけない。「ファンの言いたいことはわかるけど、普通にやったら優勝できへんねん。だからこうしてんのや」って。まあ僕自身、50歳を過ぎて、あえていろんな角度から物事を見てみようという意識が芽生えたというか(笑)。

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