岡副麻希が語るスーパーGT最終戦。ピットで見ていた"悲劇"の瞬間、その後のドライバーの涙と絆 (3ページ目)

  • 川原田 剛●構成 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

【印象に残るドライバーや監督の姿】

 TEAM IMPULの星野一義監督の人間的な魅力に触れることができたのも心に残っています。星野監督は最初すごく怖いイメージがあって、リポーター1年目は近づくだけでドキドキしていたのですが、お話すればするほど魅力的で、多くの人がファンになる気持ちがよくわかりました。星野監督は現在74歳。年齢を重ねていても、レースに対する情熱は現役時代とまったく変わりません。寒い時でもガレージの中に入らずに、絶対にピットウォールに立ち、最前線でみんなを導いています。

 2021年シーズン限りでGT300クラスに参戦していた息子の一樹選手が現役を引退し、その際にコメントを聞かせてもらった時も、「大学卒業してからレースをするのを許可したけど、もっと早くからレースを始めさせてあげたらよかった。いろいろ考えがあってのことだけど(息子に)申し訳なかったな」と率直に話してくれました。熱いだけでなく、優しくて、まっすぐ。人間としての懐の深さに心を打たれました。

 新チャンピオンに輝いた関口選手と坪井選手のコンビは最終戦までは勝てなかったものの、すごく安定していました。取材時に接する素顔の坪井選手はおっとりしているのですが、マシンに乗ると一変して、アグレッシブな走りでファンを盛り上げてくれます。岡山の開幕戦ではTGR TEAM ENEOS ROOKIEの山下健太選手と白熱のバトルを見せてくれました。

 逆に関口選手は、見た目はヤンチャなイメージですが、すごく大人で自分自身をしっかりとコントロールできる方だと感じました。特に2021年シーズンは自分の持ち味であるアグレッシブな走りを封印して、チームのために献身的なドライビングをしていた姿が印象的でした。坪井選手のスピードと関口選手の献身的な走りが実を結び、最後にタイトルをつかみ取ったんだと思っています。

 GT300クラスでチャンピオンになったSUBARU BRZの井口卓人選手と山内英輝選手は、予選でポールポジションを獲得すると喜びを爆発させて、少年のように走ってピットに戻ってきて、ふたりでジャンプしながら抱き合っていました。そういうシーンは取材していて思わず笑顔になってしまうのですが、悪いレースの時でもSUBARU BRZのふたりは感情がダイレクトに出てきて、悔し涙を流す場面もありました。そんな時は心が痛くなりましたね。

 SUBARU BRZは2021年シーズンの序盤は、予選は速いけれども決勝はなかなか結果が出ないという苦しいレースが続いていました。でも後半戦に入って決勝でもうまくハマるようになって、みごとに初タイトルを獲得。最後は笑顔というエンディングは本当によかったです。ピットから見ていても観客席はスバルの青い旗が際立っていてファン層が厚く、愛されているチームだと感じています。

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