池江璃花子の2021年初戦。心の奥で炎を燃やし続け「全力で楽しむ」 (2ページ目)

  • 田坂友暁●取材・文 text by Tasaka Tomoak
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 自分でも無理をする時期ではないことはわかっている。それほど高いレベルの結果を求めている訳でもない。それでも、『負けたくなかった』のだ。池江のアスリートとしての魂がそこにはあった。

 この結果によって、日本学生選手権水泳競技大会(インカレ)の制限タイムも突破。「ずっと出場したかった」と目標にしていた大会にエントリーした。

 そのインカレでは、8月のタイムを0秒5も上回る25秒87の6位で50m自由形の予選を通過した。決勝では、8月に見せたような初々しさはなく、過去の大きな大会で見せてきた、目の前のレースに集中する池江の姿があった。

 決勝はさらに記録を上げて、25秒62。3位だったチームメイトの山本茉由佳(ルネサンス/日本大学)との差は、たった0秒04。「第二の水泳人生のベスト。満足しています」と笑顔を見せながらも、同時に「4位はやっぱり悔しい」と、はっきり力強く口にした。

「今振り返ると、8月の試合前は不安のほうが大きかった。身体もまだ細くて、以前の自分とは違う姿を人に見せるのは、恥ずかしいという気持ちもありました。でもこのままじゃダメだとも思えたので、あのレース以降はすごくいい練習がこなせました。だから今回は自信もありましたし、心からレースを楽しむことができました」

 もうひとつ、このレースで池江が私たちに見せつけたアスリートとしての気質があった。隣の8レーンを泳いだ荒川葵(神奈川大学)との勝負に、0秒02差で競り勝つ勝負強さだ。

 レースを振り返ると、スタートは荒川がリード。25m付近では池江が逆転し、手の平ひとつ分ほど前に出る。だが、ラスト5mで池江のスピードが少し鈍ったところで荒川がグッと伸びてきたが、それをかわし切った。

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