2020.12.07

萩野公介が追い求める強さ。リオ五輪金メダル獲得後に語った本心

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 決勝で力を出し切った萩野。そこには、平井コーチとともに考えた戦略もあった。平井コーチはこう語った。

「ヨーロッパの高地合宿でいろいろ話をしました。銅メダルを獲ったロンドン五輪の時は予選を4分10秒01で泳いだけれど、決勝では飛び込んだ際に『体が重かった』と言ったんです。萩野本人は、今回(リオ五輪)の予選では4分9秒台は『いらないのではないか』とも言って。それでバタフライはリラックスして、背泳ぎは泳ぎを意識するようにとだけ指示をしました」

 大きな大会では、予選でいい泳ぎをして勢いや自信をつけることも必要だ。だが、準決勝を経て決勝が翌日になる他の種目とは違い、400m種目は1日で予選と決勝を行なうため、力の配分が必要になる。「昨年、肘を骨折して世界選手権に出られなかった経験がなければ、今の自分はないと思う」と、萩野が語ったように、泳ぐことができない時期にさまざまなことを思考したからこそ、たどり着いた戦略だった。

 平井コーチは「萩野は才能もあるし努力もできる選手だが、ひとつ足りないのは"ビッグタイトル"だと思っていました。それさえ獲れば、萩野公介というスイマーが完全体になるだろう、と。マイナスなことを考えず、自分のプラス面をどんどん考えていく北島康介のようなスイマーになれるのではないか、と。その準備がとうとう整ったという感じです」と、笑顔で期待の言葉を口にした。

 競技3日目の200m自由形決勝、萩野は疲労もあったのか、準決勝よりタイムを落とす1分45秒90で7位にとどまった。その翌日の4×200mリレーは1泳を務め、アメリカと0秒11差の2位でつないで勢いをつけ、同種目52年ぶりのメダルとなる銅メダル獲得に貢献した。