2020.10.07

入江陵介「引退したい時もあった」。7年前の苦悩と現役を続けた理由

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

――北島康介選手もアメリカを拠点にしてから泳ぎのスタイルが変わりましたが、入江選手も少し変わりましたね。

 選手は誰でも年齢が上がれば、その時の体でどういう泳ぎをするかを常に考えていく必要があると思います。僕の場合は、ウエイトトレーニングを以前より増やして、筋力もついたので、100mは少しずついい結果も出ていると思います。以前は「入江の泳ぎはきれいだ」と言われると、自分でもそうしなければいけないと考えていました。でも、今は美しいかどうかは気にしないで、パワーアップした部分と昔のよさをミックスした新しい泳ぎを作っていきたい、と思っています。以前は何も考えずにいろんなことができていましたが、これからは「どうしたらいい泳ぎができるか」と考えながら、自分で理論的に説明できるようにもしていきたいですね。

――現実的に見れば、男子背泳ぎでは入江選手に続く若い選手がなかなか出てこないのも、やめられない理由ですか。

 僕が今やめたとしても、派遣設定記録を破って次の代表に入れる選手がいないのが現実ですし、メドレーリレーも組めなくなってしまうという危機感もあります。だから、誰かに出てきてほしい、というのが今の正直な気持ちですね。

 現在はシニアとジュニアの遠征などが別になっているのですが、一緒に行動できるようになれば「ジュニアで勝ってもまだ上がいる」ということを肌で感じられますし、レースに対する姿勢や日常生活でも勉強になることは多いはずです。なので、そのあたりは何か方法を考えてもいいかなと思いますね。

 北島さんや松田さんから僕がアドバイスをもらったように、僕からも若い選手に対してアドバイスはできますが、まずは僕自身が勝つことで若い選手に危機感を持ってもらいたい。そして、僕が活躍することで「30歳を過ぎてもあれだけ泳げるのなら、自分たちはもっとできるはずだ」と感じてもらえればいいなとも思っています。

――「東京五輪だけではなく、次のパリ五輪まで出てやるというくらいの気持ちでいたい」と話していましたが、その真意は?

 そのくらいの気持ちを持って、ということですね(笑)。今は東京五輪がどうなるかわからないですし、中止になることもありうる状況なので、そこを区切りにしてしまうと、もしもの時に自分の気持ちがプツンと切れてしまうかもしれない。そうならないように、その先も見ながらやっていかなければいけないと思います。

 自分の中では「東京で終わってもいいかな」と考えることもありますが、まだ100%決めたわけではないです。例えば200mはやめても、50mと100mだけならまだいけると思うし、メドレーリレーを組めなくなってはいけないという責任感のようなものも少しはあります。だから、まだ戦えるうちに次へバトンタッチをしたい。今はそう考えています。

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