入江陵介「引退したい時もあった」。7年前の苦悩と現役を続けた理由 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

――それで、一度途切れかけていた気持ちが戻ってきたのですね。

 そうですね。その時はリオ五輪もまだだったので、自分が東京五輪へ出ることは考えていませんでしたが、五輪に対する思いは強くなりました。それに、そのあたりから、自分が日本代表を引っ張るだけではなく、素直に「(水泳を)やりたいな」という気持ちにもなっていたと思います。

――16年リオデジャネイロ五輪はメドレーリレーも含めてメダルには届きませんでしたが、どういう気持ちで臨んだ大会でしたか。

 もちろん金メダルを獲りたいと思っていましたけど、世界選手権でメダルをずっと獲って、世界のトップ3にいたロンドン五輪前とは違い、13年以降の3年間はずっと射程圏外にいました。だから、勢いがあるときとは気持ち的にも違っていました。ただ、3年間の集大成という面では、やれることはやった五輪だったと思います。

――リオ五輪後に拠点をアメリカに移したのは、メダルなしで終わったからですか?

 それもありますが、ずっと指導してくれていたコーチがリオ五輪で引退することになっていたんです。日本で新しいコーチを見つけるのは、その時は考えられませんでした。東京五輪はまだ見えていませんでしたが、水泳をやめたい気持ちはなかったので、環境をガラッと変えてゆっくり再スタートしたい、と考えました。自分より先に北島康介さんや松田丈志さんがアメリカやオーストラリアへ行っていたから、僕自身も「そういう道も歩めるんだ」と考えるようになっていたのだと思います。

――アメリカに行ってからは表情も明るくなったように見えましたが、これまでとは違う楽しさはありましたか?

 リオ五輪が一区切りだったと思います。そこまでは結果を求め、「チームを引っ張って金メダルを獲りたい」という感じでしたけど、リオのあとは結果にはあまりフォーカスせず、もっと広い視野で水泳を見て楽しみたいと思えるようになりました。本当は17年の日本選手権にも出る予定はなくて、そのくらいの(気軽な)気持ちでやり始めました。

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