2020.07.01

康介さんを手ぶらで帰すな。後輩たちの感謝の気持ちが生んだ銀メダル

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

「足がよかったら手がダメになって、手がよくなったら足がダメになって......。行ったり来たりの繰り返しでした。この数日間は、頭の中でいろんなことを考えながら泳いでいて、泳いでいるうちに迷いが出てきた。それがすごく苦しかった。200mは『余裕をもった泳ぎで行こう』と切り替えるしかない」

 そう話した2日後に始まった200m平泳ぎ。北島の予選は2分09秒43で5位通過。準決勝も5位通過ながら2分09秒03とタイムを上げた。そして決勝では、スプリンガーが持つ世界記録のラップタイムを0秒17上回る28秒64で入ると、100m通過も0秒10上回る1分01秒40と、先頭で折り返した。

 だが、150mではギュルタに0秒31逆転されて2番手に後退。ラスト50mではマイケル・ジャミーソン(イギリス)に抜け出されたが3番手で粘り、追い上げてきた1レーンの立石諒と激しいデッドヒートを繰り広げる展開になった。最後の最後はタッチの差で立石に0秒06逆転され、北島は2分08秒35で4位という結果になってしまった。

「残念は残念だし悔しいけど、100mに比べれば自分らしい泳ぎはできました。これまでずっと、前半から(攻めて)いく泳ぎをしていた。だから、ラスト50mまでためて勝負、というよりも自分の泳ぎに『トライしてやろう』という気持ちでした。五輪の舞台で最後に自分らしさをちゃんと出して個人競技を終われたし、諒がメダルを獲ってくれたので、本当に悔いはないです」

 100mの時とは違って、200mでは何の不安を抱えることなく入場できたという。メダルには届かなかったが、北島は見ている者たちを感動させる泳ぎをした。だからこそ、競技最終日のメドレーリレーでは、チームメイト3選手の心の中に「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」という強い思いが芽生えたのだ。