競泳のヒロイン大橋悠依が手に入れた強さ。初の世界で大きく成長した (4ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Enrico/AFLO SPORT

 決勝では、最初のバタフライは、27秒67の3番手のタイムで入った。

「練習では27秒で入る練習をずっとしてきたのに、日本選手権でもジャパンオープンでもできませんでした。でも、世界選手権で、練習でやってきたことをできたのがすごくうれしいかったです」

 女王・ホッスーには最初から離されたが、次の背泳ぎの100m通過は日本選手権より1秒19も速い1分00秒29で2位に浮上した。そして、準決勝から「手の出しを速くすることだけを意識していた」という平泳ぎで、大橋はホッスーに0秒01遅れる2番手のラップタイムで泳ぎ、最後の自由形は全選手中トップの30秒28でカバー。自己記録を2秒以上も更新する2分07秒91で、大橋は2位になった。

「準決勝でも150mまでは思い切っていったんですが、今日の(決勝でのウォーム)アップの方がいい状態でした。平井先生には『とにかく思いきって行け』と言われました。一番端のレーンで周りを見ていなかったから、最後のフリー(自由形)で自分はどの位置にいるかもわからなかったんですが、感覚的には『たぶん速いな』と思っていたので、『もしかしたら......』ということは頭に入れて、最後は腕も手もちぎれるくらい回しました。(2分)08秒台も出るかどうかわからなかったので、07秒というタイムはビックリしました」

 うれしそうに語る大橋と同様、平井コーチも喜びを隠さなかった。

「穴があるとすれば平泳ぎだと思っていたけれど、昨日の準決勝では平泳ぎが終わった150mで1分38秒8のベストラップ。決勝では、それを1秒以上回っていました。一番の要因は、前半を怖がらないで入ったことです。08秒は出ると思っていましたが、07秒まで上げてくれたのですごくうれしいですね。あれが大橋悠依なんです」

 ホッスーの強さには脱帽しながらも、初めての大舞台で思い切りのいい自分の泳ぎをできたこと、それに伴って大幅に自己ベスト更新し、銀メダルを獲得できたことで、大橋は世界で戦える手応えを得て、一回りも二回りも大きく成長した。

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