2020.03.31

松田丈志が北京五輪決勝レースの前に
涙が出そうになった真相

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by kyodo news

 競技初日、400m自由形予選は10位で決勝進出を逃したが、タイムは3分44秒99の日本新で、好調さは見せていた。3日後の200mバタフライ予選は、1分55秒06で4位通過。翌日の準決勝では、五輪新の1分53秒70で泳いだ怪物マイケル・フェルプス(アメリカ)に0秒32差で世界歴代3位となる1分54秒02で2位通過し、さらに調子を上げていった。

 そして、8月13日の決勝。100mは、準決勝より0秒28速い54秒41の3番手で折り返した。そのあとの50mでは、追い上げてきたラースロー・チェ(ハンガリー)にかわされて0秒19差をつけられ、150mでは4番手に後退。だが、松田自身は「前半は準決勝と同じくらいで行って、後半を上げるイメージで行きました。すごく落ち着いて泳げて、100mをターンしたあたりで『メダルは行ったな』と思いました。ラスト50mはチェとの勝負と思っていました」と冷静だった。

 松田はチェと競り合いながら2番手にいたモス・ブルメスター(ニュージーランド)をかわしたものの、チェと0秒08差の3位。それでも、記録は1分52秒97のアジア新だった。また、世界記録で優勝したフェルプスに対しても「胸を借りるつもりだったけれども、思ったよりもついていけた」と言うように、0秒94差まで迫っていた。