2019.11.07

名言「チョー気持ちいい!」の直後、
北島康介はボロボロと涙を流した

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 最初の勝負を制して自信を取り戻した北島を、200mで阻む者はいなかった。18日の決勝では、スタート後の浮き上がりから前に出てトップで50mを折り返すと、そのままトップを維持して2分09秒44でゴールし、2冠獲得を果たした。後半に追い上げて2位になったダニエル・ギュルタ(ハンガリー)に1秒36の大差をつける圧勝だった。150mまで北島に食らいついていたハンセンは、最後に差されて2分10秒87で3位に止まった。

 すべての競技が終わったあと、北島はこう話した。

「人前で涙を流したのは初めてだったけど、やはりプレッシャーはあったし、あれが五輪という緊張感から解き放たれた瞬間だったと思います。体調が悪かったり調子の波が激しかったのは、自分自身がいちばんわかっていたし、日本選手権前からメンタル面で照準が合わなかったりして、誤差みたいなものも生じていました。でも、それを気にしたら自分が不安でしようがなくなると思ったし、そうなってしまう自分が怖かった。

 五輪という特別な大会だからこそ、弱音のような言葉を一度でも口から出してしまったら、僕はそこで負けるんじゃないかと思っていたし……。強がっていた部分も多少あるけど、必ず五輪で金を取る、という強い想いだけを、心の中で描くようにしていました」

 世界の平泳ぎの新たな歴史を切り開いた北島と平井。彼らはここから先もまた、新たな歴史を築くために歩みを止めることなく、次の北京五輪を目指したのだった。

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