露わになった日本競泳陣の課題。女子強化と若手の発掘が急務だ (2ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 例えば、女子200mバタフライの長谷川涼香のベストタイムは2分6秒00だが、仮にこの記録で決勝で泳いでいれば金メダルだったし、入江陵介も去年のアジア大会でマークした100m背泳ぎ52秒53、200m背泳ぎ1分55秒11のタイムで泳げていれば、いずれの種目もメダルに届いていた。女子平泳ぎの青木玲緒樹や女子200m個人メドレーの大本里佳と大橋悠依も同様だ。

 つまりチャンスはあったのだが、自分自身のパフォーマンスが上がってないことによってチャンスを逃しているレースが多かった。

 ある選手が「調子のピークが来なかった」というようなコメントを残していたが、調子のピークは来るものではなく、自分で作っていくものだ。

 今大会は種目によってレベルの差が大きかった。渡辺一平の200m平泳ぎのように上位3人が世界記録レベルのレースもあれば、優勝タイムが遅い種目もあったので日本人選手にも大いにチャンスがあった。

 これから東京五輪に向けて世界の選手たちは、よりコンディション、泳ぎの精度を上げてくる。今回はミスをする選手やコンディションが万全でない選手が海外勢にも多かったが、来年はそんな選手は減るだろう。少ないチャンスをものにするためにも、まずは自分のコンディションを確実に本番に合わせられる選手になる必要があるだろう。

ハイレベルなレースでは、世界のレベルが一気に上がった種目もあった。世界記録が生まれたレースをあげれば、男子100m平泳ぎのアダム・ピーティ(イギリス)、男子200mバタフライのクリストフ・ミラーク(ハンガリー)、女子200m背泳ぎのレーガン・スミス(アメリカ)、男子100mバタフライのケイブ・ドレセル(アメリカ)、男子200m平泳ぎのアントン・チュプコフ(ロシア)、女子4×200mフリーリレー のオーストラリア、混合4×100mフリーリレー のアメリカがあげられる。レーガン・スミスは、4×100mメドレーリレーの第一泳者として100m背泳ぎの世界記録を更新した。

 個人種目で世界記録を更新した選手たちは、いずれも驚異的な世界記録で、大幅に記録を更新しており、来年の東京五輪の優勝候補と言っていいだろう。

 今大会は、リレー種目のレベルアップも顕著だった。予選上位12カ国に与えられるオリンピック出場枠をどの国も本気で取りに来ていた。そのため予選からハイレベルなレースだった。

 日本が来年の五輪でメダルを狙う男子4×100mフリーリレー 、4×200mフリーリレー 、4×100mメドレーリレーのレベルも上がっており、日本がこれらの種目でメダルを狙うなら4人全員の大幅なレベルアップが必要と感じた。

 今後日本は、女子の強化が特に課題だ。今大会最終日に大橋がメダルを取ったが、女子のメダルは1つで自己ベストを出した選手も白井1名しかいない。今後大胆な強化策が必要なのではないかと思う。

 まだまだ記録が伸ばせそうな若手選手が記録更新できていない現状を考えると、所属チーム単位のトレーニングで正しく選手に負荷をかけられていないのではないかと思ってしまう。これから東京五輪まで強化できる時間は多くはないので、代表チーム主導で様々なコーチの経験も活かしながら、若手選手の可能性を伸ばしていく取り組みが必要だと感じる。

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