大橋悠依が失意のどん底から銅獲得。
心にストンと落ちた助言があった

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 二宮渉●写真 photo by Ninomiya Wataru

「27日の朝練習に来た時に、スタッフのひとりが『別に泣いてもいいんじゃない? 自分の頑張りに対しては失礼のないようにしないと。頑張りを無駄にしないようにしないともったいない』と話してくれて。それがストンと心の中に落ちてきて、結果が悪くても自分のために頑張ろうと思えました」

 不安はあったが、これまでも試合の中で急激に動きがよくなることがあり、それと同じものを感じながら400mでも決勝進出を決めた。

 決勝では、前半は女王カティンカ・ホッスー(ハンガリー)と互角に競り合ったが、後ろから迫ってきていた2012年ロンドン五輪金メダリストの葉詩文(中国)に最後の最後で抜かれ、4分32秒33で3位になった。

「前半はホッスー選手と競り合うレースができました。後半では突き放されて最後も抜かれたけれど、素直にメダルが獲れてうれしい気持ちがあります。最後の自由形で、葉選手が追い上げてきたのは見えたので、とにかく抜かれないようにしたいと思っていたし、瀬戸大也さんから『最後は脚がもげてもいいからキックを打て』と言われていたので、その言葉どおりにしたら、ゴール後も全然動けなかったです。自由形が、これからの強化ポイントだとわかったのも収穫でした」(大橋)

 前回大会の銀メダルは、プレッシャーもなく挑んで獲れたメダルで、自分の成長を確認できるうれしいメダルだった。それに対して、今回の銅メダルはこの2年間、プレッシャーを感じながら過ごしてきて、200mで失敗した後に獲れたメダルだった。大橋はこのメダルの価値をこう話す。

「来年へ向けてすごく意味のあるものだし、今までやってきた試合の中でも意味のあるメダル。記憶にも残るものになると思う」

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