大橋悠依が失意のどん底から銅獲得。心にストンと落ちた助言があった

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 二宮渉●写真 photo by Ninomiya Wataru

 大橋悠依(イトマン東進)にとって、2度目となる世界水泳選手権大会は、涙の失格から始まった。

 7月21日の女子200m個人メドレー準決勝は、全体6位の成績で決勝進出を決めた大橋。「おそらくメダルラインは2分7秒台になると思うので、前半はしっかり1分を切って入りたい」と、決勝に向けて意気込んでいた。しかし、翌日の決勝では思い描いていた記録を出せず、加えて背泳ぎから平泳ぎに入るターン後のドルフィンキックが泳法より1回多かったという理由で失格になった。レース後、大橋は次のように語った。

今季自己ベストを出して、400m個人メドレーで銅メダルを獲得した大橋悠依今季自己ベストを出して、400m個人メドレーで銅メダルを獲得した大橋悠依「準決勝も決勝も体は動いていましたが、どうしても銀メダルを獲った2年前と比べると違うものがあって......。そこを比べると不安なものが残ると思ったり、ライバルの選手たちが速いのを見て『勝てないんじゃないかな』と思ったりしていました。頭が迷うと体も迷うと言うけど、そういうのがあったと思います」

 また、平井伯昌コーチはこの結果を受けて、こう話していた。

「メダルを獲るのが当たり前と期待されて、自分でも自分に期待するようになっていた。自分も世界王者に勝つと口にしていたことで、責任感を感じながらやっていた。そのあたりに(不安との)ギャップがあったと思う」

 大会前の大橋の準備に関しても、平井コーチは十分にできていたと振り返る。だが、そんな環境のなかで、日々気持ちが揺れて、最近ではメンタルの浮き沈みも激しくなっていた。

「ずっと前向きにならなければ変われないと思ってはいましたが、なかなかできなかった。それを、できない自分がダメだなと思うことを繰り返していたので、すごく自分を卑下していたし、普通に生活するのもしんどくなっていたんです」(大橋)

 200m個人メドレーが終わったあとも、結果を引きずってしまい、「2分9秒36というタイムだったわりに余力はなく、様々な映像を見直してみても、今の自分にはこの泳ぎはできない」というネガティブな思いしか浮かんでこなかった。

 それが吹っ切れたのが、400m個人メドレーの前日だった。

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