松田丈志が考察。瀬戸大也と渡辺一平が
狙って勝つためにやるべきこと

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 今後の課題は、予選から攻めの泳ぎができるベースを作っていくことだろう。今大会、渡辺は準決勝まで力を温存していたが、勝負をする上で後手にならない為にも、高いレベルで3本(予選、準決勝、決勝)泳げる能力が求められる。それは渡辺本人も自覚していた。

「僕は予選・準決勝はできる限り力を使わないようにと考えていました。対して彼らは、予選と準決勝でいいタイムを出して、自信を持って決勝に臨んでいたように思います。練習も僕以上にキツいことをやってきたんだなと感じたので、僕も(今後は)いいタイムを3本揃えられるような力を、(東京オリンピックまでの)1年でつけていきたいです」

 それに続けて、この種目のへの思いを「日本の"お家芸"である200m平泳ぎは、東京オリンピックで絶対に勝たないといけない種目だと思います。これだけ強いライバルが同世代にいるのはすごく光栄なことなので、負けないようにしっかりと1年間やっていきたいです」と力強く述べた。

 また、奥野コーチは東京五輪で勝つために2分5秒台を条件とし、「超ハイペースなレースで最後逃げ切るしかない」と話した。そのために、まずは上半身を強化してプル(腕のストロークの中で、前方でキャッチした水を体の近くへ引き寄せる動作)での推進力を増すこと。さらに、決勝のレースではラスト50mのラップタイムが33秒15だったため、耐乳酸トレーニングを丁寧に丹念にやっていくことで、最後までチュプコフから逃げ切れる力を身につけることを課題とした。

 私から見た今回の渡辺の収穫は、予選から決勝まで狙いどおりのレースができたことだ。予選からいい記録を揃えることを課題には挙げたが、渡辺本人も言うように各レースで現時点の能力を出し切っていたし、レース中のペースや泳ぎもコントロールできていた。

 渡辺が世界新記録を出したのは国内大会(2017年の東京都選手権)で、世界選手権のような世界のライバルがいる中で出した記録ではなかった。しかし今回は、世界記録保持者として金メダルの期待がかかるプレッシャーを背負いながら、世界水泳の舞台で想定どおりの泳ぎができた。世界で勝つことを"狙って"勝負ができる実力がついてきた何よりの証拠だ。

 この自信と悔しさを胸に、来年の東京五輪では世界記録での金メダルを目指してほしい。

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