号泣した日もあった青木玲緒樹。女子平泳ぎ日本代表のピンチを救った (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 二宮渉●写真 photo by Ninomiya Wataru

「前半のことはあまり覚えてないんです。『落ち着いて泳がなければいけない』という思いでいっぱいで、ストローク数も初めて数えられなかった。前半はいい感じだったので『いけるかも』と思い、『頑張ろう』と思ったら力んでしまって......。

 最後は『頑張りすぎちゃいけない。落ち着いていかなきゃ』と思ったけど、なかなか気持ちと体がうまくいかなくて。でも、何とか代表を内定できてよかったです」

 そのレースを見ていた平井伯昌コーチは、「決まった瞬間はウルッときましたね。ロンドン五輪に出た上田春佳と青木だけは小さい頃から見ていて、親より一緒にいる時間が長いので、震えるくらい緊張しました」と笑い、こう続ける。

「日本選手権の決勝は、周りを見すぎて潰れちゃったところがあるので、『マイペースでいけ』と言いました。決勝は前半を18ストロークで入ったので、それだと後半も20ストロークくらいでこられるかなと思ったのですが、22ストロークだったのでちょっと慌てた印象でした。本人も『ターンするときに(鈴木)聡美さんが見えるので、そこで慌てないようにしたい』と言っていたのですが、ターン後のひと掻き、ひと蹴りでいつも焦るのが課題。そこで追いつかれたのが誤算だったかなと思います」

 日本選手権後は気持ちも落ち込み、1週間ほど経ってからの練習のタイムがあまりにも悪く、平井コーチには「ジャパンオープンもやめた方がいいのではないか」とまで言われた。その翌朝は、朝食を食べている時に涙が止まらなくなり、朝6時に平井コーチに「今日の練習は行けません」と電話した。

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