塩浦慎理がコンパクトな身体で日本新。入院→泳ぎの見直しが功を奏す (3ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 もう一つ会場を盛り上げたのが、男子50m自由形の塩浦慎理だ。

 準決勝で従来の記録を0秒20上回る、21秒67で日本新記録更新。翌日の決勝は記録更新こそならなかったが、21秒73で泳ぎ「これくらいのタイムならいつでも出せると実感できた」と1段階レベルが上がったことを本人が実感し、周りにも示した。

 塩浦は昨シーズン終了後、喉の病気で約3ヶ月入院し手術もした。

 しかし、3ヶ月の入院生活が自身の水泳の取り組みを見直すきっかけになったという。

 入院生活で過去最高で98kgあった体重は86kgまで落ちた。

 どうせ体重が落ちたのならと、これまでパワーに頼っていた泳ぎを見直し、コンパクトな身体づくりをしてきたという。

 以前はトレーニングの比率が水中練習3:ウエイトトレーニング7だったのが、水中練習7:ウエイトトレーニング3に変更した。さらに親交のある柔道の羽賀龍之介に減量方法のアドバイスをもらうなどして食事の管理も徹底し、主に脂質の量をコントロールして、コンパクトな体づくりを進めてきた。

 その結果、今大会時の体重は89kg。以前の体より約10kg軽いニュー塩浦慎理が完成した。

 実際の50mのレースでは、今まではなかった30m過ぎからの伸び、動きのキレを見せた。以前と比べて筋量がどの程度変化したかは分からないが、仮に少し筋量が減っていたとしても、約10kg軽い身体は以前よりも少ないパワーで泳げるだろう。

 コンパクトな身体の効果はレースのパフォーマンスだけでなく、レース後のダメージも少なくなったという。

 オリンピックや世界選手権では大会期間が1週間強ある中で、自由形短距離選手は個人種目に加え、リレー種目もあるので沢山のレースを泳がなければならない。その1レース1レースがダメージとして体に蓄積されて行くわけだが、1レースあたりのダメージが減れば当然身体の回復も速くなるし、結果的に大会を通してのパフォーマンスが上がることになる。

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