瀬戸大也が自己ベスト更新。要因は「ウエイトトレーニング減」にある (2ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • 田村翔/アフロスポーツ●写真 Photo by Sho Tamura/AFLO SPORT

 この種目で、世界選手権でメダルを獲るには最低でも1分56秒前半のタイムが必要だが、瀬戸は夏に向けて調子を上げていくのが抜群にうまい選手だ。4月の時点でこのタイムなら夏にさらなる自己記録の更新の可能性は大いにあると思う。

 瀬戸の好調の要因はどこにあるのか。

 一つはリオ五輪以降ウエイトトレーニングの負荷(時間と強度)を減らしたことがあげられる。

 瀬戸の言葉を借りれば、「ほぼほぼトレーニングは、水中トレーニングで完結できるようにしている」と語る。

 私の考えでは、ウエイトトレーニングの意味は、筋量を増やしてエンジンを大きくすること、パワー発揮の出力を上げること、さらには傷害の予防などがあると思う。

 瀬戸は元々泳ぎの技術が高く、水中でのパワー発揮が非常に上手い選手だ。

 こういう選手は水中練習でも体に強い刺激を入れられるので、水中練習の強度を上げるだけで身体、つまり筋に刺激を入れることが出来る。

 瀬戸の体を見る限り、エンジンとなる筋量はもう十分にあるので、ウエイトトレーニングは筋量の維持程度で、あとは泳ぎの精度や持久力の向上に時間を割くというコンセプトで取り組んでいるのだろう。

 しかし私が強調したいのは、瀬戸も今の段階に入るまでに、みっちりウエイトトレーニングを行ない、身体づくりに時間をかけてきたプロセスがあるからこそ、今の段階があるということだ。

 もう一つが先日のコラムでも書いた昨シーズンから続けている積極的なレース展開の積み重ねだ。ウエイトトレーニングで身体にかける負荷は減らしたが、その分水中練習の負荷を増やし、さらにレースでは常に積極的に前半から攻めて自分に負荷をかけていく。その積み重ねが今の瀬戸の安定感と自己ベスト更新に繋がっている。

 レース毎に調子を上げるタイプの瀬戸だけに、今後さらに負荷の高い水中練習と、積極的なレースを重ねていけば、200mバタフライでも前半から積極的に攻めれる自信が得られるのではないか。

 今大会残りの400m個人メドレーでの泳ぎにも注目だ。

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