競泳の日本選手権で喜びなき優勝が続出。だが、若手の台頭には期待 (4ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • YUTAKA/アフロスポーツ●写真 photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 3日目男子200m自由形決勝では、昨シーズン一気に自由形の中心選手になった松元克央が1分45秒63の自己ベスト、日本歴代2位の好タイムで優勝、派遣標準記録を突破した。

 昨シーズン大活躍した松元だが、今シーズンは肩を痛め本格的なトレーニングを再開できたのは12月末だった。リハビリ中は本当に治るのか心配になっていたというが、リハビリ担当者の言葉を信じて、地道なリハビリを乗り越えた。リハビリを通して泳ぎのフォームも肩に負担のかからないものに改良を行なった。

 元々ストロークに左右差があった松元だが、リハビリを通して、痛めた右肩に大きく負担のかかる泳ぎになっていたことが分かったという。右手のキャッチを少しゆっくりにする代わりに、左手をこれまでよりも強くかくようにすることで、右肩への負担を減らしたそうだ。結果的に泳ぎの左右差がなくなり、以前よりもテンポが一定の泳ぎになった。

 また、肩が痛い時期は下半身を中心にトレーニングを行なったことで、下半身の強化にも繋がり、足をレース後半まで打ち続けられるようになったこともパフォーマンスの向上と、肩の負担軽減に繋がったという。

 準決勝までの泳ぎは周りを見すぎてペースが上がらなかったが、準決勝後に鈴木陽二コーチに「お前はお前なんだから思い切って行け」と言われ、決勝では自分のペースで思い切りのいい泳ぎを見せ150mまでは日本記録を上回るハイペースで飛ばし、好記録、自己ベストにつなげた。

 今後、松元には萩野公介の持つ日本記録の更新、さらに1分44秒台に突入できれば、競争の激しいこの種目で世界の舞台で個人種目でのメダル獲得も見えてくる。

 競泳の日本選手権は残り4日間。決勝種目はあと21レース。一人でも多くの選手が派遣標準記録を突破してほしい。そして、少し重たい会場の雰囲気を一気に変える、そんなレースにも期待したい。

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