競泳の日本選手権で輝くのは誰か。松田丈志が見どころをズバッと解説 (3ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 400m個人メドレーで、世界選手権で2度金メダルを獲得している瀬戸大也はシーズンインから好調を維持している。瀬戸は実績が示すように、すでに完成度の高い選手だ。その完成度の高い瀬戸が自身の伸びしろと感じている部分がレース展開だ。

 4種目の中で一番苦手な背泳ぎが2番目にあることで、2017年までの瀬戸はどうしても萩野公介やアメリカのチェイス・カリシュから前半で遅れを取ってしまい追いかける展開となる。そこに伸びしろを見出した瀬戸は昨シーズン、前半から積極的に入ることをテーマとし、常にそのレース展開を実践してきた。

 そのスタンスは今シーズンに入ってからも変わらず、徹底的に前半から攻めるレースを繰り返している。選手にとって、冬場のしかもコンディションの万全でない大会で前半から攻めるレースをすることはかなり勇気のいることだが、徹底してそれをやりきる瀬戸の泳ぎに、「この取り組みで現状を突破したい」という強い気持ちを感じた。それらの取り組み一つ一つが刺激となって、瀬戸を強くしたと思う。最大のライバル萩野が欠場したことによって瀬戸は今大会完全に自分に集中してレースができる。昨シーズンから磨いてきた積極的なレースパターンで好記録を期待したい。

 男子200m平泳ぎの2強対決にも注目したい。世界記録保持者の渡辺一平と、この種目で日本選手権4連覇中の小関也朱篤だ。2月上旬に行なわれた、きららカップで直接対決をし、共に2分8秒前半の好タイムで泳いでいる二人。その時は小関に軍配が上がっているが、そこからそれぞれ米国での高地トレーニングを行なっている。小関は5連覇を、渡辺一平は自身が持つ世界記録の更新を目標としており、この世界トップレベルの直接対決からは目が離せない。

 男子200mバタフライも熾烈な代表権獲得争いが予想される。自己ベストの持ちタイムでは3番手だが、好調の瀬戸大也が中心のレースとなりそうだ。その瀬戸より速い自己記録を持つリオ五輪銀メダリストの坂井聖人と昨年の日本ランキング1位の幌村尚も実力者だが、この二人は共に昨シーズン肩の不調に悩まされた。そこからどの程度復調しているかがポイントになる。昨年1分54秒台に突入し、勢いのある矢島優也にも注目だ。世界選手権でメダルを獲るためにも1分53秒台での勝負に期待したい。

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