4年ぶりのメダル獲得。入江陵介はアメリカで大雑把な身体に成長した (2ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 これは日本のスポーツ界全体の課題でもあるかもしれないが、日本のスポーツ界の現場は、どうしても「結果を出さなければ」という雰囲気がある。しかし海外でトレーニングしてみると分かるが、海外の選手にそんな重苦しさは感じられない。

 私もアメリカ、豪州、イタリアなどの海外チームでトレーニングした経験があるが、皆「スポーツを楽しむ」というマインドが根底にあって、スポーツは一種のゲームだと思っている。監督やコーチに「言われたからやる」という雰囲気は皆無で、自らスポーツに取り組んでいる雰囲気だ。

 ただ、いざという時のトレーニング強度の高さや、集中力の高さは凄くて、直前まで冗談交じりにペラペラ話しているのに、突然とんでもなくキツイ練習が始まったりする。その気楽さと、トレーニングの強度の高さが今の入江にもマッチしたのだろう。

 さらにアメリカのコーチはよく褒めてくれる、とも入江は話していた。ベテランともなれば、何でもできて当たり前と思われるが、入江本来の泳ぎの技術の高さや、日々の成長を言葉にして伝えてもらえることは、常にトレーニングと向き合う選手にとってはモチベーションが高まることだろう。

 身体の部分では、いい意味で大雑把になった。

 入江の課題は常にパワーとスプリント力だった。日本にいる時もそこにアプローチをする為、肉体改造にも取り組んでいたが、なかなかやり切れなかった部分があった。

 それは泳ぎの技術が高く、かつ繊細な感覚の持ち主なので、筋力アップやパワーアップのトレーニングを行うことによる、微妙な感覚のズレ、変化が気になってしまい、肉体改造が道半ばで止まってしまうところがあったのだ。ある程度感覚の変化やズレにも目をつぶらないと肉体改造はできない。

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