松田丈志の予感。「池江璃花子の進化は
国際大会で加速する」

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

アジア大会は「国際総合競技大会」

 アジア大会は競泳だけでなく、様々な競技が行われる国際総合競技大会だ。派遣するのもパンパシフィック水泳選手権は日本水泳連盟だが、アジア大会はJOC派遣となる。この違いは、じつは大きくて、JOC派遣となる国際大会はそう多くなく、ということは経験できる回数も限られている。五輪も当然JOC派遣だ。

 ではその水連派遣の大会とJOC派遣の大会とで何が違うのかと言えば、全競技共通の公式ユニフォームがあって、結団式もあり、連盟派遣では無いさまざまな行事が追加される。移動や式典などでいろいろな競技の選手が一緒に過ごす。さらに最も大きな違いは、大会期間中は選手村が設けられるので、そこでも他競技の選手を含めた、チームジャパンとしての生活が待っている。競泳陣としては、パンパシで得られた修正点をいかに改善し、国際総合競技大会という枠組みの中でいかに力を出し切り、戦うかがポイントとなりそうだ。

 そういった環境下で自分の力を発揮できるかどうかは、特にその経験が少ない若手選手にとってはとても重要な経験となる。アジア大会は年齢制限のない国際総合競技大会としては東京五輪前最後の大会となる。競泳の枠を超えた、チームジャパンとしての戦いに期待したい。

リアルタイムで応援できる

 パンパシフィック水泳選手権とアジア大会の共通の楽しみとしては、共にゴールデンタイムにテレビ放映されることだ。私も解説として関わらせてもらうが、競泳の魅力を広く伝える絶好のチャンスだ。ぜひ現役選手には競泳ファンを惹きつける、さらにはファンを増やせるような活躍を期待したいし、私もその活躍を伝えられたらと考えている。

 パンパシに話を戻そう。まず期待したいのは池江璃花子だ。今年に入って日本新記録を連発している。今シーズンの好調さは広く知られているだろう。だが彼女には一つ乗り越えなければならない壁がある。それは国際大会で池江自身が納得する泳ぎをすることだ。それが自己記録更新なのか、メダル獲得なのか、彼女にしかわからないが、現状彼女の実感として、「自分はまだ国際大会で結果を出せていない」という思いがある。

 だがその壁は、さっそく今日行われる200m自由形であっさり超えてしまうのではないかと、期待している。池江は200m自由形で1分55秒04という今シーズン世界ランキング5位のタイムを持っている。国内大会での実績は十分な彼女が国際大会で一つ壁を越えれば、国内大会のように破竹の勢いで成長が加速する予感がする。

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